この歌、はじまりの詩【九条天】 (ページ23)

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暗闇の中、静まり返った野外ステージ

だんだん会場がざわついてきた

そこかしこから不安などの声が飛び交ってる

｢これ、中継できるの…？｣

｢流石に暗すぎるから無理かもね｣

確かに、この暗闇じゃ何も映らない

中継しても意味がない

『っ… 』

いくら頑張れと叫んでも、意味がないかもしれない

何を頑張れというのか、そう聞かれれば私だって何も分からない

―ただ、こんなところで終わってほしくない

そんな思いが、願いだけが私を埋めつくしていく

そんな願いが届いたかのように、ステージにピンスポが当てられる

そこには、四葉環くんが立っていたんだ

ステージから手拍子が聞こえる

とても小さな手拍子

｢ Hey！エブリバディ！Hands Up！！｣

この声は、六弥ナギくん、かな

ナギくんの声につられるかのように、だんだんと会場全体に手拍子の音が広がる

ピンスポに当てられた環くんが踊りだす

音もなく無音な空間

それでも環くんと会場いる私たちの間には確かに何かがあった

環くんが踊りだしてどれくらい経っただろうか

そんなに時間は経ってない

なのに、なぜか長く感じているのは気のせいなのだろうか

環くんが踊り終わると同時に、止まっていた音楽が流れはじめた

後ろから誰かが歩いてくる

あ、確かあの人は、逢坂壮五さんだ

その逆に環くんは後ろへと歩く

二人の距離が近づく

そして――

パァン、とハイタッチをした

『 ―やるじゃん、IDOLiSH7…！』

壮五さんが歌い出す

｢ふと隣見ると仲間がいるんだ～

目の前には微笑んでるキミに…Be there! ｣

｢ね？Dancing DREAM!!

もっと先まで… ｣

その瞬間、さっきまでの沈黙の時間がまるで何も無かったかような感覚を覚えた

―「今の！演出だったのかな！」

―「IDOLiSH7やっぱりすごいね！！」

『うまく演出って感じにもってたね』

｢やるわね、IDOLiSH7のマネージャー｣

｢三条さんに認められたね、IDOLiSH7のマネージャーさん｣

雨が降るライブステージ

途中、トラブルも起きたけど、それでも

このライブはとても素敵で、忘れられないものになったと私は思う