ぐらり、揺れて 8/3 ページ9
「……はぁ」
部活に、行きたくない。
後輩の女の子がすごく私を嫌ってる。
でも、話さないわけにはいかなくて。
行かないわけにもいかなくて。
溜息をつきつつ、部室のドアに手をかけた。
指が細かく震えていた。
部室の中から聞こえる、私の悪口。
どうせあの子だろうな
嫌いだってことわかってるよ。
私も嫌いだもん。
でも、わかってても傷ついちゃうの。
開けたくても開けられなかった、ドア。
ぱしっ
「行こ」
誰かに腕を引っ張られた。
ドアから指は離れ、指の行き場がなくなり空を彷徨う。
…誰?
誰かは分からないけど、部活から逃げるきっかけをくれたことに感謝したい。
「ちょっ…!」
かろうじて声を出せたのは、見知らぬひとに引っ張られ、廊下の端まで引きずられた後だった。
「誰ですかっ…!?!?」
泣きそうになりながら言った。
「…俺ですか?」
俺以外ここに誰がいるというのか。バカなのか。
「…はい」
「俺は、岡本圭人です。なんか、辛そうな顔してたから」
ふにゃりと笑った笑顔。
一瞬で落ちる、と確信した。
「…ありがとう、ございました。じゃあ」
お礼だけ言って帰ろうと思っていた。
ぐっ
また、腕をつかんで引き留められた。
「ねえ」
「なんですか?」
「よく、頑張ったね。」
そういうと、彼は立ち去った。
彼のネクタイは、3年生を表す緑色で。
私のリボンは、2年生を表す赤色。
どうして、通りすがりの人に。
どうして、わかったんだろう。
私に投げかけられた言葉が優しすぎて、思わず涙があふれた。
最近は、嫌で冷たく怖い言葉しか投げかけられなかった。
優しい言葉は、久しぶりだった。
ぐらり、揺れて の説明のようなもの。→←きみのoff の説明のようなもの。
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