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鳴宮side
泣きながら恥ずかしい、って笑った相楽は初めて会った時みたな綺麗な笑みだった。
涙を拭きとった相楽は繋がれた手にもう一つの手を重ねてありがとうと呟いた。
俺は相楽の力になれただろうか。
今まで俺ばっか助けてもらって何も返せてなかったから。
繋がった手をお互い離して俺は相楽に聞きたかったことを尋ねた。
「相楽は俺に一人で引いたらダメだって言ったけど、それは何で?」
相楽はそんなこと言ったっけ…なんて首をかしげるもんだから意味はなかったのかと苦笑する。
戻ろうと腰をあげて少し前を歩くと「でも、」と零す。
「湊は待ってくれていた人がいたでしょう?
それに弓が好きって伝わってきから一人で引いたらダメだって思った」
言い終わった相楽は俺の隣に並んだ。
確かに、静弥も遼平も待ってくれていた。それに相楽も。
「なんだかお腹空いたよ〜ねぇ、湊!焼きチョコバナナ作ってよ」
鼻歌を歌いながら先を歩いていく相楽。
俺は無意識に呼び止めた。
「待っててくれてありがとう、”心音”」
目を見開いた心音はフッと笑ってココでもよかったのに〜とクルリと回った。
最終日、心音の調子は戻って避けていた射場での練習も今までにないくらい引いていた。
俺たちも立順が決まり、まだどうしてあの立順になったかはわからないままだけど、意味がある。
矢渡しが始まりなら、納射は区切りだ。
無事に済んだことを神様に報告し感謝するのだ。
俺は少しでも前に進めただろうか。
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作者名:銀河 | 作成日時:2019年2月1日 21時