ツルネー風舞高校弓道部ー (ページ23)

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「…中学の最後の試合で決勝戦までいったんだ。

決勝戦前までは全部皆中するくらい調子よくて、決勝戦も外す気なんてしなくて、

今なら、俺が憧れた弦音を出せると思った。そう思いながら引いた一本目…

今のように口割りについてすぐに矢は離れて的にすら届かなかった。

二本目、三本目って中てなきゃと思って焦って…結局残だった。

試合は負けて、愁にも静弥にも迷惑をかけた。練習で直そうと思っても思うようにいかなくて悪循環のように早気は進行していって…

自分でわかっているからこそ、周りの声がやけに耳に入ってきて…」

湊はその先は言わなかった。

なら、私が代わりに言葉にしよう。

「苦しかったんだよね。」

湊が息を吞む気配がしたけど、私はそのまま話す。

「わかっているのに、思うようにいかなくて…

中らないからとか周りからバカにされるのが怖いんじゃなくて自分を見失ってしまうから怖いんだよね。」

「なんで…」

「ねぇ、湊。

治したいんだったら一人で引いてちゃダメだよ。

私と一緒に風舞で引こう。今すぐじゃなくていい。少し落ち着いたらでいい。

早気を治す練習にも付き合う。

待ってるから…」

雅さんと同じこと言う…と湊が呟いた。

雅さんって誰ぞ？と首を傾げたが湊がそれ以上話すことは無く、

私もその先は言えなくて、その日はそのままおやすみと電話を切った。

ー「何で、あんなに中ててたのに」

ー「離さなければ良い問題じゃん。結局あいつのモットーは軽いんだって」

ー「真剣にやれよな」

私は、弓道を……だけなのに。