4 ページ5
.
.
.
学校の帰り道。見上げた真っ黒の空の上で数えられないくらいの星が瞬いている。
あの手紙を聞いた後は、授業なんてまともに受けられなかった。一日中、なにも考えられなかった。
どうやら、生まれつきの心臓病で長く生きられないと医者に言われたらしい。中学生の頃、そうはっきり言われて、毎日のように泣いたそうだ。でも、笑っていた方が楽しい、そう気付いたと書いてあった。・・・だからアイツは毎日笑っていたんだ。
そして最後に、みんなはこれから先長いから、人を傷つけず、お互いに助け合ってユメをかなえて下さい、と担任がぽろぽろ涙をこぼしながら最後の1行を読んだ。
実感がわかない。いきなり死んだなんて聞いたって、なんで言ってくれなかったんだろうと、カタチのない悲しみが込み上げてくる。
もう季節は冬に変わろうとしていた。
寒いな、と思いながら制服のポケットに手を突っ込むと、何か手にあたった。
帰りに担任からもらった1枚の紙切れの存在を思い出す。取り出して、街灯の下へ行き、恐る恐る広げた。
そこに書かれていた細い文字を見た瞬間、もうだめだった。
今までありがとう。黙っててごめんね。手塚くんとしゃべるのすごく楽しかった。好きでした。
あれ、雨が降ってきたのかな、紙の文字がにじんでるよ…――いや違う、これは涙だ。
今さら両想いになれてどうすんだよ、俺辛いじゃん…そう思いながら地べたへしゃがみこむ。
子供みたいにわんわん鳴きたい気分だった。だが、さすがに家が立ち並ぶここでは出来ない。
それすら許されないのか、と思い神様を恨む。
ふとあの日の放課後を思い出した。
――だからアイツはあのときどこか淋しそうな笑顔をしたのか。
会いたい。もう手の届かない存在になってしまったと分かると、辛くて胸が張り裂けそうだった。
俺、お前に好きって言いたかったよ。
.
.
fin.
75人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「病系」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
BERU - すごく感動しました。私は大切な人を失うという感覚はわかりません。もし大切な人を失ったら私はその時何を思うんでしょう(><)でも大切な人は失いたく無いです。これからも大切に毎日毎日生きていきたいと思います。 (2018年7月8日 20時) (レス) id: b33c82a94e (このIDを非表示/違反報告)
柴崎 彼方(プロフ) - ive kanadaさん» コメントありがとうございます。読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m (2018年5月7日 0時) (レス) id: a8ce4c24a2 (このIDを非表示/違反報告)
ive kanada - 切ないですね。実は私も、昨年の夏に大好きな彼を失いました。辛いですよね。次の作品も頑張ってください。 (2018年4月29日 21時) (レス) id: d2d4448e52 (このIDを非表示/違反報告)
柴崎 彼方(プロフ) - 無気力零架さん» コメントありがとうございます!そうなんですか…(><) (2017年4月3日 0時) (レス) id: a8ce4c24a2 (このIDを非表示/違反報告)
柴崎 彼方(プロフ) - 雷斗さん» 嬉しいコメントありがとうございます(*^_^*)頑張っていきたいとおもいます! (2017年4月3日 0時) (レス) id: a8ce4c24a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:彼方 | 作成日時:2015年3月26日 22時