続 自由な少女の隠し事【RKRN】

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「はい、どうぞ。」


忍者服を吹雪に渡してせっせと裁縫道具を片付ける。
三郎はちらりと横目で見た時に気がついた。
吹雪が嬉しそうに顔を綻ばせていたことに。

彼女は人を常に警戒する。
信じていないわけでもないが、信じきっているわけでもないのだ。
六年生はまだ警戒を解いているかもしれないが、それから下の学年には常に警戒線を張っているように三郎は日頃の人間観察で気づいていた。

三郎のように人一倍人間観察が得意な者でも長く見続けないと分からない。
それ程に分かりにくいのだ。
あまり表情を変えずに、でもある程度のことは任せて、信じている様に見せかけている。
忍者には向いているが、悪く言えば食えない、よくわからない人だ。
下級生は当然の事ながら気付いていない。

五年の中で気付いているのは、自分か野生勘があって同じ委員会の竹谷か、それくらいだと思っている。

そんな吹雪が自分の前で表情を綻ばせている。


「ありがとう、三郎。」


顔は無表情だったが、嬉しい気持ちを外に出して彼女は出て行った。

無表情が多い彼女の仮面は些細なことで呆気無く崩れた。
嬉しい、そんな気持ちが空気に溢れていて。これは、絆される。
警戒しているのを知っているのに、たまに見せられる気を抜いた、警戒を解いた時に見え隠れする表情。

喜車の術とは、まだちょっと遠くて、でも演技でもなくて。
完璧に無意識で。

彼女はきっと平然と嘘をつく。嘘を貫き通す。
その裏では嘘を付いたことに心を痛めている。吹雪はそんな人だ。

だから、余計に性質が悪いのだ。


(そんな表情を見たいから、何度でも直してあげているのかもしれない。)

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