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自室で明日の予習をしていた時に、三郎は誰かに呼ばれ筆を置き将棋を開けた。
「あれ、吹雪先輩。」
「やぁ、三郎。」
雷蔵に声似せたのに今日も無理だったか…と思いながら肩をすくめる。
どうかしましたか?そう聞く三郎に吹雪は気まずそうに後ろにあった何かを差し出した。
「…また、頼んでもいいか?」
吹雪が差し出したのは深緑の六年生の制服だった。
三郎は自分より一回りも小さいそれを広げて、敗れてしまった箇所を見る。
それは、園田村に来る前、雑渡昆奈門に苦無で切られた場所だった。
「…自分でするとかはないんですか…」
「…私より三郎の方が上手だ…」
三郎は深くため息をついて、部屋の中に吹雪を通した。
押入れから裁縫箱を取り出し、針に糸を通す。
三郎は破れた箇所をチクチクと器用に縫っていった。
吹雪は裁縫が苦手だ。全くできない訳ではないが、好んでやろうとしない。
だが、一度三郎が見兼ねてやってあげた時に、キラキラとした目で見られたのを彼はよく覚えていた。
それから吹雪は忍者服が破れた時には三郎に縫ってもらっている。
一度立花先輩に頼まないのか、と聞いたが「仙ちゃんは面白がって可愛らしいワッペンをつけたりするんだ…」そう遠い目で言われた時は思わず肩に手を置いた。
縫い終わり鋏で余った糸を切り、固く結んだ。
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ねう。(プロフ) - とっても面白かったです!一気読みさせてもらいました。主様また占ツクに戻ってくることがありましたら…更新いつまでも待ってます! (2022年12月18日 1時) (レス) @page8 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
奏多(プロフ) - 凜さん» 返事が遅くなりすみません!読んでいただいてありがとうございます!最近は更新がものすごくスローでして…このようなものであれば、読んでいただけると幸いです。 (2017年8月18日 22時) (レス) id: 1626c1b1aa (このIDを非表示/違反報告)
凜(プロフ) - 全部見させていただきました!続き楽しみです!頑張ってください! (2017年8月10日 4時) (レス) id: b0ea0966a6 (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - 奏多さん» はい!楽しみにしてます! これから夢主と伊作くんがどんな風になるか期待・・・♪(( これからもファンとして読ませていただきます! (2017年7月18日 22時) (レス) id: 9ac6925e6d (このIDを非表示/違反報告)
奏多(プロフ) - 桜もちさん» ありがとうございます!前作から読んで頂いて嬉しいです!6は制覇しよう、と意気込んでおります!更新が最近はまばらですが、見ていてくれたら嬉しいです! (2017年7月18日 22時) (レス) id: 1626c1b1aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏多 | 作成日時:2017年7月15日 13時