六 ページ6
「初めて見たん？」
神ちゃんがお茶を渡しながら優しい声で聞いてくる。
まだ震えは止まらないけれど、これでも大学に着いてからは幾分かマシになった。
「うん……。」
それしか言えない俺。
正直、どうやってここに帰って来たのかも思い出せない。
それくらい恐怖という感情が心を占めていた。
「俺実はさ、五大元素の能力者やねん。あ、皆見たからわかるか。」
流星が重い雰囲気を打ち破るかのように言う。
それ結構ヘビーな内容やん。
しかし、おかげで俺の心は恐怖よりも五大元素の能力への好奇心が勝った。
「水の能力者？」
淳太がそう言うと、流星は頷く。
「そ。能力の元素は水。守護獣がおって、その守護獣のおかげで耳が人よりも発達してんねん。」
「だから最初に何か聞こえるって言ってたんやな……。」
聞こえてはいけない音まで聞こえる為、霊が苦しむ声が聞こえたそうだ。
俺はそんな音聞きたくない。
そんな思いが顔に出ていたのか、照史に笑われた。
しげと神ちゃんは前にいたからわからなかったけれど、四回生の三人は俺と一緒にいた為、流星が能力を使った事に驚いていた。
多分、皆といる時に能力を使ったのは初めてなんだろう。
「守護獣って何がついとるん？」
ついてるって、言い方。(笑)
�陲舛磴鵑量笋い傍い砲睥韻瓩左�を開いた流星。
「玄武。」
その名前に驚いた。
玄武と言えば、中国では四神と言われている伝説の生物だ。
架空の聖獣と言われている。
にわかには信じがたい。
でも、実際に霊の声が聞こえていたし、呪文を唱えて大量の水を出現させていたのをこの目で見た。
能力はきっと本物だ。
そう結論付けると、急に感動的な気持ちになってくる。
さっきまでの不安など、どこかに行ってしまった。
噂だと思っていた能力者は、こんなにも近いところにいたのか。
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作者名：かんた | 作成日時：2020年4月30日 23時
