三十四 ページ34
「”境内にてその昔に紛失した五つの鈴を探し出すべし。ただし気をつけよ。鈴にはそれぞれ悪霊がそれを拒む。”」
箱から出てきた試練を読み上げると、ふーっと息を吐く流星。
少し緊張しているみたいだ。
今回の試練は神ちゃんのものと似ている気がする。
「行ってくるわ。」
頑張れ、流星。
表で待つこと数分、流星が戻って来た。
早ない？
何かあったのだろうか。
「終わったー。」
「「「「「「は？」」」」」」
いや待て待て待て。
んなわけないやろ。
「ほんなら鈴見せてみぃ。」
淳太が疑いの目で流星を見ると、握っていた手を俺らの前に差し出した。
「ほら。」
そこには間違いなく五つの鈴がある。
「ほらちゃうわ！ これホンマに試練の鈴なんか？」
しげも思わずツッコミを入れる。
見た目はだいぶ古いようだが……。
「ホンマやって！」
聞くと俺らと別れた後、他の参拝客のおばあちゃんに声をかけられたそうだ。
『これ、あなたの落とし物？』と見せられたのは五つの古い鈴だった。
おばあちゃんの後ろには悪霊が五体憑いていたから、試練の鈴だと気づいたらしい。
流石におばあちゃんの前で能力を使うわけにもいかない。
一人になった瞬間にまとめて懲らしめたという事だった。
「いや、誰かが持って来てくれるとかラッキーすぎるやろ……。」
神ちゃんは自分の時との違いに少し悔しそうだ。
いや、神ちゃんだけじゃなく全員が思っていると思う。
無言の時間が続く。
「まぁ、運も実力のうちって言うからな！」
照史が務めて明るく言うと少しだけ空気が和らぐ。
まぁどんな理由であれ、達成は達成か。
それにこれが達成扱いになるかどうかの判断は拝殿に行けばわかる。
そう結論付け、拝殿に向かった。
拝殿には流星の家の家紋が入った青色のひょうたんがあった。
流星はそれを拾い、報告する。
すると青色の光に包まれ、手のひらには青色で描かれた玄武の姿が描かれた。
あ、達成でいいんや。
多分全員が思った。
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作者名：かんた | 作成日時：2020年4月30日 23時
