二十九 ページ29
「最近地震多いよな。」
流星は注文を頼み終えると、開口一番そう言った。
いつものメンバーでいつものカフェに来ていて、話題は日本で各地で最近頻繁に起きている地震の事だ。
今日の午前の講義中もこの辺で地震があった。
幸いにも震度三くらいだったので、特に被害はなかったが。
「大きい地震が来なかったらええんやけどなぁ。」
神ちゃんがショートケーキを頬張りながら言う。
その時、俺のスマホが鳴った。
「何や彼女か？」
しげが茶化してくるが、無視を決め込む。
流星と神ちゃんに電話に出る事を伝えて席を立つ。
「俺は無視かい！」
「姉ちゃんや。」
そう答えると、カフェの入り口付近に移動して通話をタップした。
すっかり忘れていた。
今日は姉ちゃんが観光がてら俺の様子を見に来る日だった。
『あんた今どこおんの！？ 迎えに来てって言ったのに！』
開口一番そう怒られた事を思い出す。
結局ゆっくり話も出来ないまま、カフェを出てきた。
「絶対連れまわされるんやろうなぁ……。」
そう言えば、行きたい場所がたくさんあるって言っていたような気がする。
家族のLINEがここ最近賑わっていた事をぼんやりと思い出した。
今日は自分の時間は取れないなと覚悟を決めた。
でも、何やかんや言って姉が来てくれるのは嬉しい。
足早に姉が待つ場所へ向かう。
最近は大学の講義以外は、サークル活動のことばかり考えている。
元々好きだというのもあり、更に本を読むようになった。
俺が試練を受ける日の為に、鍛錬も今まで以上に時間を費やしている。
思えば四月の入学式から、陰陽五行説にまつわる事しかしていない事に気が付く。
どれだけ没頭していたか今になって気づき、少し呆れて笑ってしまう。
たまには息抜きも必要やな。
せっかくだし新しい服でも買おうか。
そう考えると楽しみになってくるから不思議だ。
相手は姉だけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 266人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かんた | 作成日時：2020年4月30日 23時
