夜空に奏でる六等星 (m.a) (ページ13)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:1,474 hit

13 ページ13

俺は、職場先へ出勤した。

小さな郵便局だけど、職場の皆、和気アイアイしてて温かい。
俺は、この職場が大好きだ。
村のお客さんも温かくて、お互い野菜や果物とか、あげ合いっこしている。
いい村に引っ越してきたなぁ～って実感するよ。

プロのチェロ奏者をしていた時も楽しかったけど。どこか孤独な所もあった。
皆が助け合って演奏してたけど。
『もっと上を目指さなくちゃ……』って常に自分と戦ってた。
でも、それはそれで楽しい。
チェロ奏者になりたくて、叶えた夢だから。苦しかったけど、毎日楽しかった。
子供の頃の俺みたいに感動して、少しでも興味持ってくれたらいいなって…
一人一人に俺の音楽(メッセージ)を届けたいなって必死だった。

凛の為に辞めちゃったけど、俺はそれで良かったと思う。
『もうプロには戻りたくないのか？』と言われたら嘘になっちゃうけど。
守るべき家族が出来たから。
家族のいない俺には、大切な家族。
失いたくないし、辛い思いさせたくない。

それに、今の生活に満足してるんだ。
だから後悔はない。

「喉かだねぇ～」

昼休憩になり、俺は職場近くにある河原で寝そべっていた。
耳にイヤホンをして、音楽を聴きながら寝るのが癒される。
心地よい風も吹いている。
これが、いつものスタイルである。
休憩時間になると、いつもココに来て音楽を聴いている。
もちろん、聴いているのは『classic(クラシック)』。
一応音楽家だからさ。

あー。弾きたいな～。
聴いてるとウズウズしてきちゃう。

俺は眼をつぶり、頭の中でオーケストラの場景に入り込んだ。

華やかなステージ。でも、そこは、どこか重みがあって深い。
観客席は暗いけど、皆がこっちに注目してるのが分かる。
バイオリンが歌い始める……
ビオラ…コントラバス…オーボエ…フルート………様々な歌声が重なりあいコーラスとなる。
次は、いよいよチェロのソロ………
緊張が走る……思いっきり楽しもう。

俺は、自然と弦に指を当てた…

弓を弦に当てる…

視線の先には、燕尾服の指揮者。
二人は息を合わせ、お互いを高め合う……

自分の音に酔いしれながら、周りの音を聞き、指を揺らす………

あぁ…………

なんて、心地のよい調和音なんだ。

自分が呼び掛けると、他の楽器が答える。

絶妙なハーモニー………

「なーに、酔いしびれちゃってるんですか。あなたは。」

その声で一気に現実へ連れ戻された。