印と詩の秘密�� ※文字多 ページ33
【 Aが生まれて13年後 】
｢…………はぁ、泣き止んだか｣
紫の髪を揺らして、男はAの頬に長い指をなぞらせた。そうして幸せそうな声で言う。
｢君は笑顔の方が良い｣
『…………ｸﾞｽﾞ…………』
｢私はもうこの世にいられないのだ。これからは一人で生きていかなくてはならない｣
『………や…………だ………パパと』
｢はは、パパと……か｣
君を1人にすることを許してくれ……
私は本当の父親じゃない。
君の父親はもう死んでしまったんだ。
私の姿があるのも、君が私の魔力をまだ使えなかったからにすぎない。魔力を使えるようになったから、魔力の元所有者である私は消えるしかない。
すぐに息を引き取れると考えていたが、まさかこんな落とし穴があったとは。
※※※※※※※
グラス、気付いたんだ。
君に私の死を託した事が過ちだと気付いて、謝りに行こうとした。
まだ力が不安定で"小さな身体"に慣れるまでに数日かかってしまったが、君のもとへ行こうとした。
そして女王陛下に
｢全ては私の仕組んだことだ｣
と言うつもりだった。しかし私が来る前に君はもうその事を証言しているだろうか？と考えていた。
君なら家族や一族を守るために証言するだろう。
この赤子を逃がしたのだって一応のためだろう？
魔法を使い、やっとの思いで作った塔の上に赤子を置いて、小さな妖精たちに数日世話を任せ、元の大きさの体を取り戻し茨の谷に着いたのはそれから4日後だった。
街の張り紙を見て
嘘だと思いたかった
君の一族は皆殺しにされていたんだ
それが信じられなくて………信じたくもなかった。
その時わかった。
君は一族の命より、茨の谷の皇太子の名誉を守ったのだと。異常なまでの忠誠心に従ったのだと。
馬鹿だと思った。
友を殺した自分が心底憎くて
友をつかった自分が醜くてたまらなかった。
※※※※※※※
｢君の父は私の死について公表することを……望まず死を選んだ。君には本当に悪いことを……すま…ない……｣
………力がぬけていく。
指先から粒子がほろほろと灰のようにおちていく。
『だめｯ…ｸﾞｽﾞ……いったらやだァァァァ!!!!パパぁああ!!!!!』
小さな妖精たちはどうすることも出来ずにオロオロとしながら、Aから溢れ出る大粒の涙を何度も布で拭って、チリンと声をかけていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 135人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小鉄 - 私昨日から小説書かせていただいてるんですがきっかけが主さんなんです！ずっと憧れでしたまだまだ上手に書けていませんが主さんを励みに頑張ります！ (2022年12月10日 15時) (
レス) id: 15ea1c6ed3 (このIDを非表示/違反報告)
めろ(プロフ) - 暇人さん» ありがとうございます😭 (2022年2月17日 23時) (レス) id: 75feb1bede (このIDを非表示/違反報告)
暇人(プロフ) - やばい好きすぎる (2022年2月16日 16時) (レス) @page32 id: 56c105e887 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：金木犀 | 作成日時：2021年11月6日 16時
