36. 帰り道。 ページ38
「残念だな、雨なんて。」
「ね。晴れてたらすごいよ。青とか、赤とか。」
時刻は午後8時。関門海峡周辺上空。
大野さんからの“お守り”を今日もしっかり携え、俺たちは沖縄から東京へむかっている。
「なんですか、青とか赤とかって...」
「空の色！晴れてたら昼はすごい青だし、夕方はすごい赤だし！」
「.......。」
すごい青に、すごい赤...小１みたいだな(笑)。
櫻井さんの微妙に子どもっぽい表現に若干呆れつつ、コックピットの外を見る。
前回のフライト、櫻井さんと搭乗することに興奮しまくった俺は、 コックピットから見える青空のことをすっかり忘れ、ただただ櫻井さんの操縦技術に見入っていた。
澄みきったキレイな空は、ただの背景になり、そのことを後になって思い出した俺は、今日こそ、“コックピットから見る特別な空 ” を堪能しよう！と、息巻いていたのだ。
なのに...
コックピットの外には、灰色の空。
「あーあ。」
「あははっ(笑)。そんな残念？」
「残念ですよ！もぅ、誰のせいだと思ってるんですか？」
「えっ？俺のせい？」
「そうです！」
「えぇっっ？なんでなんで？？俺雨男じゃないよ？あ、智くんかなぁ？あの人ね、雨男。大事な日とか、気合い入れてね、嵐呼ぶの(笑)。」
分かりやすく顔が綻ぶ櫻井さん。
まったく...どこが“鬼”だよ...
しかし人は勝手なものだ。超絶イケメンだとか言っときながら、注意された途端に鬼呼ばわりするのも、自分のミスを棚にあげて文句を言うのも。その捌け口を、弱い方へ持っていくのも...。
俺に出来ること...
未だ、目尻を下げている櫻井さんに若干呆れつつ、それでも心が暖かくなることを自覚しながら考えていると、
ポーン
無線連絡の音がした。
「はい、JS1204便。はい... はい... えっ？」
俺の声に、櫻井さんがこちらを向く。
「はい... 分かりました。」
「コントロールセンター、なんだって？」
「東京空港、視界が悪くて現時点で着陸不可能らしいです。現在上空で15機待機中、だそうです... 。」
無線を切った俺に、すぐ問いかけてきた櫻井さん。
さっきまで綻ばていた顔は、あっという間に、真剣な顔に切り替わっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1441人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
櫻宮 - 大野さんの繊細な心と翔くんの強い気持ち…それを優しく見守る3人が何だか"ほっこり"して凄く好きです！mioさんのお話もっと読みたいです！！ (2019年11月7日 12時) (
レス) id: 95d5f07b44 (このIDを非表示/違反報告)
リカ(プロフ) - こんにちは。先日、旅行に行って参りました。機内から空を見ていたら、もう一度物語が読みたくなりお邪魔させていただいています。2人の物語、5人の物語、幸せな気持ちになります。 (2017年9月4日 22時) (レス) id: c3477e2eb7 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 沙羅さん» 沙羅さん。コメントありがとうございます。ふあふあ大野さん、感じて頂けて嬉しいです☆これからふあふあじゃない彼も、しょーくんとの揺るぎなさも、お届け出来たらなと思います！ラストシーズンまでぜひ、お付き合い頂けたら嬉しいです(^^)よろしくお願いしますっ♪ (2015年3月18日 9時) (レス) id: b1673f9bd6 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大野さんのあのふあふあかん最高です！櫻井さんの過保護な感じにきゅっときますね、笑色んな関係が見え隠れしてて読むのとてもわくわくします (2015年3月17日 10時) (レス) id: ca60bde7d3 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - えりんこさん» えりんこさん♪お返事遅くなりすみません(;_;)ありがとうございます。嬉しいな。麗しの青さんだなんて、ほんとに嬉しいです。えりんこさんのお話の、凛とした青さんも、私大好きです！なかなかうまく表現できなくて困っていますが、また読みに来て下さったら嬉しいです (2014年11月20日 17時) (レス) id: b1673f9bd6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mio
| 作成日時：2014年6月7日 22時
