28. 大野さんの、少しの真実。 ページ30
あれから数ヶ月、知ったことや気付いたことがが、いくつかある。
そのひとつが、
“ 大野さんは、手話を使わない ”
ということだ。
櫻井さんとならまだしも、俺たちや、ほら、今だって。
いくら大野さんが手話を使っても、相手がそれを理解しなければ元も子もないが、必要とあらは、俺だって、手話を勉強するくらいの気概はある。
多分、潤くんだって、相葉さんだって、マルだって。大野さんの仕事ぶりを知る人なら、みんな。
「あいつな、昔は聞こえてたんだよ。」
「えっ？あ、... えぇっ？」
ガバッと振り返ると、コーヒー片手にいつの間にか松岡さんが立っていて、いつかのように、うぃーす、と、笑った。
「いつからそこに... 」
突然現れた松岡さんと、突然明らかになった衝撃の事実に、またも感嘆詞を連発した俺。
「なに？昔は聞こえてたって、どういうこと？」
同じく顔中でビックリしていた潤くんが詰め寄る。
「うん、事故、でな。 」
聴力の神経をやられたらしい、と、コーヒーに視線を落とす。そして、だから、相手の口の動きを読めば、何を言っているか、だいたい理解出来るみたいだ、と、付け加えた。
「... あの、足も悪そうなんですけど、それもその時の事故で？」
「うん、 そうだな。」
ある程度のやつなら、みんな知ってるよ、と。
きっぱりとした物言いが、逆にそれ以上詮索するのを、禁じているようだった。
松岡さんは、それ以上のこと、知っているのかな....
俺たちの視線の先には、大野さん。
ふんわりと、儚げな人。
いつかマルが言っていた。「大ちゃん、まーったく、聞こえへんらしいねん。」
まったく聞こえない、つまり、“ 無音 ” であるということ。
ある日突然突き付けられた、自分の世界から音が消える、という現実。
この人は何を、思ったのだろう。
何を、乗り越えて来たのだろう。
大野さんは、なんとか注文したらしいコーヒーを持ち、歩き出していた。
途中、盛大に手招きをしている潤くんと、その隣に立つ俺と松岡さんにも気付き、ふんわりと笑うと、ゆっくりこちらへ向かって来た。
ニコニコして手招きをしている潤くんは、その笑顔に、哀しさと切なさを、隠していた。
大野さんに笑顔を返した、俺も。
多分、松岡さんも。
ふんわりと、儚く。でも、確かな意志を持った、凛とした瞳。
ゆっくりゆっくり、こちらへ向かってくる大野さんを見詰めながら俺は、この人のために何が出来るだろうかと、考えていた。
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櫻宮 - 大野さんの繊細な心と翔くんの強い気持ち…それを優しく見守る3人が何だか"ほっこり"して凄く好きです！mioさんのお話もっと読みたいです！！ (2019年11月7日 12時) (
レス) id: 95d5f07b44 (このIDを非表示/違反報告)
リカ(プロフ) - こんにちは。先日、旅行に行って参りました。機内から空を見ていたら、もう一度物語が読みたくなりお邪魔させていただいています。2人の物語、5人の物語、幸せな気持ちになります。 (2017年9月4日 22時) (レス) id: c3477e2eb7 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 沙羅さん» 沙羅さん。コメントありがとうございます。ふあふあ大野さん、感じて頂けて嬉しいです☆これからふあふあじゃない彼も、しょーくんとの揺るぎなさも、お届け出来たらなと思います！ラストシーズンまでぜひ、お付き合い頂けたら嬉しいです(^^)よろしくお願いしますっ♪ (2015年3月18日 9時) (レス) id: b1673f9bd6 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大野さんのあのふあふあかん最高です！櫻井さんの過保護な感じにきゅっときますね、笑色んな関係が見え隠れしてて読むのとてもわくわくします (2015年3月17日 10時) (レス) id: ca60bde7d3 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - えりんこさん» えりんこさん♪お返事遅くなりすみません(;_;)ありがとうございます。嬉しいな。麗しの青さんだなんて、ほんとに嬉しいです。えりんこさんのお話の、凛とした青さんも、私大好きです！なかなかうまく表現できなくて困っていますが、また読みに来て下さったら嬉しいです (2014年11月20日 17時) (レス) id: b1673f9bd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mio
| 作成日時：2014年6月7日 22時
