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満足感√ ページ17

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1年ぶりに訪れた写真スタジオには、去年と変わらずAがいた。


俺を見ても特にこれといった反応もなく、接客を続ける様子に俺の不安はどんどん掻き立てられていった。


衣装決めは違う女の人が担当になった。


どの衣装を着るか悩む家族の横で、店内を見回してもAの姿は無い。



「俺、ちょっとトイレ…」



着付けまでには戻るわァ、と言い残してその場から離れた俺は、受付の所に探していた姿を見つけた。


ドクンと胸が躍る感覚と、今すぐにでも声を掛けたい気持ちを抑えて、静かに正面に回りその姿を見つめた。


接客中とは違う、難しい顔をしてPCの画面を見ていたAが不意に視線を俺に向けた。



『…実弥くん?どうしたの?』



驚いたような表情を浮かべたAがやっと視界に俺だけを捉えてくれたことに満足しきれずに、俺はゆっくりとカウンターの内側へ回った。





「なァ、前に言った言葉覚えてるかァ」

『…っ』




息を呑むようにして見開いた瞳が小刻みに揺れる。




『なんのことを、言ってるの?』




か細く震える声が、俺の望む通りであることを物語っていた。



じわじわと満足感が心を満たしていく。




「その反応は覚えてんなァ」



手を伸ばして、俺から目を逸らそうとするAの輪郭を持ち上げて、無理矢理視線を合わせる。




心臓が爆発しそうなほど早く脈打って、この音がAに聞こえてたらカッコわりィな、なんて余計なことを考えたのがいけなかった。



Aは俺の手を振り解くように顔を背けた。



『…はやく、お母さんの所に戻らないと、撮影始まっちゃうよ?』



さすがに戻らないと怪しまれるか…



名残惜しさと何も出来ない歯痒さを奥歯に噛み締めて、俺は立ち上がってその場を去った。





.

モヤモヤ√→←我儘√



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設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥   
作品ジャンル:恋愛
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ひよ(プロフ) - 完結おめでとうございます!! 番外編での二人の詳しいその後に、改めてきゅんとしたり、ほう、と至福の溜息をつかせて貰いました。実弥くんと10年もかけた純愛が出来て幸せです。二人ともお疲れ様でした!! (2021年12月10日 22時) (レス) @page43 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 完結おめでとう!そして、お疲れさまでした!待ってたよ♡笑 どちらが書いているのか分からない程の完成度の高いリレーでの合作流石でした!ピュアピュアの可愛い実弥さんに。二人の一途さにキュン…久々に純愛読ませて頂きました!素敵なお話をありがとう😊 (2021年12月10日 21時) (レス) id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - ヤヴァイ←素敵すぎて語彙力が無になりました(^-^) (2021年10月7日 23時) (レス) id: f3f7dadf62 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - なります!!なりますとも!!! (2021年10月6日 21時) (レス) @page31 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 奏海さん» もう、拭いてもらいました…ムフフ。 (2021年10月3日 23時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:奏海/羽糸 x他1人 | 作成日時:2021年8月7日 21時

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