【ヒロアカ】轟兄さん３【男主】 (ページ8)

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『どこいったんだろう…』

中庭じゅうを探すがなかなか見つからない

もう家の中にはいなのかもしれないと思い、家から出て探してみる

『って、どこ探せば…』

随分と走って時間も経った

日も沈みかけている

ニャー

微かに聞こえた鳴き声にあたりを見渡すと土手の方に黒猫が俺の方を見ていた

待ってた、そう言っているかのように

『…君が、俺の記憶消したの？』

「にゃー」

『なんで？』

多分、たぶんだけど

俺はこの仔を知ってて、この仔も俺を知ってる

＿＿忘れちゃえばいい＿＿

＿＿Aが辛いなら＿

＿＿私が忘れさせてあげる＿＿

言葉じゃないけどわかった気がする

この仔の気持ちを、想いを

『そっか、ありがとう。ありがとうね』

手を伸ばすと素直に腕に収まる

あったかかった、懐かしかった

『でもね、俺は、俺が羨ましいんだ

１週間記憶がなかった、でもみんな優しくて

俺はヒーローで教師だったって聞いて

あんな頼もしい生徒達がいて。

焦凍君や冬美ちゃん。他にも弟が２人いる

俺は、記憶がある時の俺の苦労なんてわかんない

何か辛いことがあったんだと思う

忘れたいって思うくらい

でも、でも…忘れたら何もないんだ

辛いことも、嬉しいことも、何もないんだよ』

にゃぁ

俺は最後に夢を見た

きっとこれはこの仔の記憶

暑くて今にも死にそうで、一生懸命鳴いてみた

何日も、何日も

そんなある日、誰かが助けてくれて元気になった

でも、その人が次の日帰って来たら自分を抱いて声を殺して泣いた

忘れたい、静かにそういって

忘れたいなら、忘れさせてあげよう

綺麗な花とともに、幸せを…届けたかった

「兄さん！出かけたと思ったら戻ってこねぇから心配した！」

『…そっか、あの時の猫か』

「猫っ！？見つけたのか？どこだにっ」

『いいんだ。もう大丈夫だよ焦凍』

記憶が戻った俺はその後いつも通りの日常に戻った

あの夜。あの猫がいなくなった理由もその後のことも全部知った俺は

次の土曜日花屋で買った花束を川に投げた

「兄さん！」

『あぁ、焦凍今帰りか？』

「うん、母さん元気だった。兄さんは何してたんだ？」

『ひーみつ』

これは俺と、不思議な猫のはなし

オリジナルストーリー(終)