離れないよ、蛸だから【吉田ヒロフミ】 (ページ9)

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「Aさん」

トントンとドアがノックされる。ヒロ君が公安に行くと聞いてから３日ほど経ったがその日からヒロくんと顔を合わせていない。私はまだ寝室に篭っていた

「そろそろ俺行くね。何かあったら電話でもメッセージでも送って」

『…』

行くってどこに？もう行っちゃうの？

１ヶ月、私から離れるの？

胸がモヤモヤで渦巻いて枕に顔を埋める

「じゃぁね」

ドア越しに聞こえるヒロ君の声と気配はガチャリと玄関の音が聞こえて遠のいていく。その音が怖くて私は反射的にベットから飛び出ていて勢いよくドアを開けた

『ヒロ君ｯ！！』

行ってほしくないとか寂しいとかそんな簡単な理由じゃない

嫉妬だとか気に食わないとかそんな簡単な感情じゃない

「やっと出てきた」

居ないはずの彼はドアを開けたらすぐにいて私に微笑んで勢い余った私を受け止めている

『ぇ、もう行ったんじゃ』

「Aさんの顔見るまでいけない。だって一月も会えないのに」

１ミリも隙間なく私よりずっと大きな体に抱きしめられる。ヒロ君の匂いがする。ヒロ君の体温を感じる

胸に顔を押し付けて背中に腕を回して服を掴むように抱きしめ返す

「Aさん」

『私、怖いの…ヒロ君が居なくなるのが怖い』

１ヶ月くらいの留守番ならきっとできる

でも、デビルハンターなんて【もしもの事】なんて日常茶飯事

しかも今回はマキマからの依頼で簡単にすむ話な訳がない

何をさせられるんだろう。どんな奴と戦うんだろう

ヒロ君は強い。でも最強じゃない

だから怖いんだ

だから心配なんだ

本当の本当は行ってなんかほしくない

でもあの人の依頼を簡単に断れるわけもないから

『死なないでッ』

必死に出した声は震えてた