離れないよ、蛸だから【吉田ヒロフミ】 (ページ3)

今日:5 hit、昨日:17 hit、合計:57,747 hit

３ページ3

微かな音と微かな匂いに目が覚める。

手を伸ばして彼女を探したがもうすでにそこにはいなくて冷たいシーツに感触だけが手に触れた

「Aさん」

『ヒロ君おはよう』

寝室を出るとエプロンを身につけて髪を高いところで一つに纏めた彼女の後ろ姿

声をかけるとこちらを振り向いて笑って見せる

彼女が自分のモノで、この光景がずっと続くなら俺はもう何もいらないと彼女のすぐ背後に立って手をまわして密着する

『もうすぐでご飯できるよ』

「うん」

『昨日はありがとう』

「お礼言うくらいなら知らない奴らと飲みに行かないで」

『それは無理だよ。私もそこらの大学生みたいに遊びたい年頃なんだから』

大学生のAさんを想像する

今と大差変わらない姿。

彼女の周りには人がいて強くもないのに飲み歩いて毎晩違う男に抱かれるんだろう

「だから俺が遊んであげるって言ってるのに」

『…きっとヒロ君がバディじゃなくて、違う出会い方だったら遊んでもらってたかもね』

彼女の細い体に巻きつけた腕を強く締めて見える頸に噛み付くようにキスをする

『ふふっ、ご飯できたよ。』

スルッと腕の中から抜け出した彼女はテーブルに料理を置く。キッチンに置いて行かれた俺に振り向いてまた笑顔で『さ、食べよ』と言った