anytime （渡辺） (ページ1)

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今、私の目の前に居る彼は最近話題の某事務所のキラキラアイドル。

『ねえ、なべ』

私の声に向かいに座ってた彼はスマホから顔を上げた。

『肉焦げてる』

「うわっ、やべ、なんでもっとはやく言ってくんねーの」

『今日は俺が美味しい肉食わせてやるからお前は手出すな！って言ってたのは誰ですかー』

「そうだっけ？」

なべはとぼけた顔をしながら、私の皿に真っ黒な肉を入れた。

『え、まってまって、いらないからこれ！』

「わがまま言うならやんねーからな！」

ファンからしたら彼は王子様かもしれないけど

私からしたら彼は私より2個も年上なのに

子供で我が儘な幼馴染。

そんななべと私はもう10年以上の付き合いになる。

なべと私が出会ったのは中学生の頃。

私には2歳上の兄がいて、なべは私の兄と仲が良くて、よく私の家になべを含める数人グループで遊びに来ていた。

それで、顔見知りになってたまに話す程度の仲になった。

高校にあがると、チャラくなってなべは目立つようになったけど、バイトで稼いだお金でご飯に連れてってくれたり、なんだかんだ私を可愛がってくれた。

大学に進学しても就職しても

なべがデビューしても

たまに会ってお酒飲んだりご飯食べながら話したり

暇だからショッピング付き合ってとか

そんなゆるい関係が続いている。

高校時代も大学時代も、渡辺先輩と友達なんて羨ましい！ってずっと言われてきたけど、

私となべはただの友達であって

恋愛感情なんてないからまったく分からなかった。

きっとそれはなべも同じだと思うけど。

「なかなかタクシーつかまんねーな」

『まあこの時間はね』

焼肉も食べ終えてただ今、22時。

木の葉も黄色く色づき初めて夜は少し肌寒くなってきた気がする。白いブラウスの袖を引っ張りながら時計を見た。

『まだ全然、時間あるし私電車で帰るよー』

「一緒に乗ってけばいいじゃん」

『えーでも、まだ22時だから、なべ今から彼女の家行くでしょ？方向逆だし』

「あー彼女？別れたわ」

なべはギャップを被り直しながら何食わぬ顔で言った。

『はっ？？もう？つい最近じゃん付き合ったの』

「ちょ、お前、声でかいって」

『あっ、ごめん』

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