鈴の音色 2【HQ 西谷夕】 (ページ18)

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第61話ページ18

Aside

土曜日。
テスト前最後の週末でどの部活も休みで学校はとても静かだった。

『入ってるのバレたらマズイか。』

いくら人に見つからないこの場所でも、誰かに見られたらダメだ。待ち合わせには少し早いけど向かおうかと思っていたら

『…！』

校門前に誰かいる。
上から見れば人がいるのは分かるけど、誰かまでは分からなかった。

『…………あ。』

あれは、西谷君だ。
勉強会前に何をしているのだろう…忘れ物？
気になり屋上から降りて静かに後ろへ回った。
大きな溜め息なんかついて…

『何してるの…』

西「どわあ！！！…って、夜月さん！？」

驚きすぎ。
今日から部活はないからか、ジャージとは違うラフな格好をしていた。トレードマーク…の、四字熟語Tシャツに短パンね。

西「いや、その…勉強会前の……散歩…」

嘘だとは思うけどとりあえずは納得したように振る舞っておけばいいか。
それにしても…

『随分と複雑そうな顔してるけど。』

眠れていないのか、考え事なのか。

西「ちょ、いやぁ昨日遅くまで張り切って慣れない勉強してたらよ！」

この人は本当に嘘が下手くそだなと心底思う。
表裏のない、嘘が付けない正直なのは悪いことじゃないけど。

『………そ。』

いつまでもここで話してても仕方ない。とりあえず田中君の家に向かおうとすると

西「なぁ、夜月さん……」

彼には似つかわしくない、消えそうな声で呼び止められた。

『…？』

西「…………っ、いや、なんでも…」

『そう。なら向かうけど。』

西「！…おぅ、一緒に行こうぜ！」

ﾆｶｯと、無理に笑ったその顔は、彼には似合わなかった。

『途中で雪と合流すると思う。』

西「吉村？あいつ龍の家は知らねぇのか。」

『詳しくは知らないらしいから。』

雪にざっくりとした時間と待ち合わせ場所を連絡しながら歩き出した。
隣で黙って歩く西谷君は下を向きながら、また何か複雑そうな顔をしている。

考えてる事、分かったけど。