鈴の音色 2【HQ 西谷夕】 (ページ10)

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第53話ページ10

Aside

午後になると次第に雲が薄くなり、うっすらと日が差し始めていた。
みんな眠たそうに授業を受けている。
ノートを取っているけどこの時間が一番勿体ない。みんな書き写すのに必死で内容なんて理解していない。ノート提出なんてなければ教科書に書き込めるのに。

ふと廊下側の彼に目がいった。
あ、ちゃんと起きてる。

先「じゃあこの問題を～…夜月、解けるか？」

『はい。』

必然と起きてる人に当てる。むしろ起きている人の方が少ない。
回答を黒板に書き、先生を見る。

先「流石だな、正解。」

席に戻ろうとしたら

西「すいません、その式はどこから出たんスか？」

これは私に聞いているのだろうか。
先生に視線を送り、頷く。

『チェバの定理は覚えてる？この図の場合～…』

できるだけ分かりやすく、理解しているか。
真剣に聞いてる彼と、他の起きている人たちにも伝わるように。

「分かりやすい…」
「なるほど、同じ面積の図を色で分けて…」

どんな人でも飲み込めば早い。応用になると分からなくなるのは誰でもそう。

先「……私の出番はなかったようだな。教えてる身としてこんな事言うのもなんだが、数学ってのは、正直将来使うかなんて分からん。ただ、今夜月が説明してくれたように、何故そうなるのか、理解することも大切なんだ。」

西「すげぇ……夜月さん、サンキューな！」

『いいえ。』

私だって勉強が好きなわけではない。
やるべきことの1つであり、それだけのこと。

朝の暗い空が、嘘のように晴れた。