第31話 ページ31
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ひんやりと寒い廊下からリビングに戻ると、エイジが背中を丸めてこたつに入っているのが見えた。
(…私、さっきあいつに抱きしめられてたのか)
寒さで丸まっているけど、でも男らしくて広い背中。それを見ていると、なんだか。
私は我慢できなくなって、なんでかわからないけれど鼻がツンとして涙が出そうになって、その大きな背中を抱きしめた。
「…っ、……A?」
「………」
「おーい」
「…ちょっとだけ」
「…ん、」
うちの洗濯物のはずなのに、やっぱりすこしエイジのと混ざった匂いがする。こたつに入る彼の後ろからお腹に手を回すと、大きな手が私の腕を撫でた。「どうしたの?」なんて言う低い声が近くで響く。
(人を好きになるって、やだな、泣きそう、)
わけもなく抱きしめたくなって、わけもなく涙が出そうになる。そうか、これが。
ぎゅっと力を込めると、エイジは私の腕を優しくほどいてこっちを向いた。
「なーに泣きそうになってんの」
「なってない、し」
エイジは私の顔を覗き込んですこし苦笑い。直後、視界が暗くなって、私の唇にエイジの少し乾いたそれが押し付けられた。
1秒も経たずに離れた唇に、名残惜しさを感じる。エイジは私の頬をつまんでこう言った。
「…Aはさ、寂しいだけなんだと思うよ」
「…寂しい?」
「うん、だぶんね」
「そろそろ寝よ」エイジはそう言って、私のベッドから少し離れたところに布団を敷いた。
「…うん、」
「Aおやすみー」
「…おやすみ」
ベッドに入って、電気を消した。
エイジの言葉の意味を考えれば考えるほど、頭がこんがらがってくる。でもきっと、拒まれたってことなんだろう。
布団に入っているのに身体中が冷たくて、目を瞑っても眠れる気がしなかった。
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あや(プロフ) - ぜひ!ぜひ!ぜひ!続きを!!更新待ってます!! (2018年8月5日 22時) (レス) id: 5116ee690c (このIDを非表示/違反報告)
悠(プロフ) - ☆ルナ☆さん» あと少しですがお付き合いください!(((o(*゚▽゚*)o))) (2017年11月29日 23時) (レス) id: fd69086671 (このIDを非表示/違反報告)
☆ルナ☆(プロフ) - キュンキュン/////(((o(*゚▽゚*)o))) (2017年11月29日 0時) (レス) id: 915f053575 (このIDを非表示/違反報告)
悠(プロフ) - Cさん» コメントありがとうございます!!これからもキュンを追求していきます…! (2017年11月24日 18時) (レス) id: 2a7f43fe4e (このIDを非表示/違反報告)
悠(プロフ) - 冬春@アバ小説更新中さん» こっちも嬉しいです…!これからもお楽しみください〜! (2017年11月24日 17時) (レス) id: 2a7f43fe4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タバタ | 作成日時:2017年11月6日 15時