【アバンティーズ】気に入らないあいつ

第12話 ページ12

__Eiji side






「はいじゃーんけーん」

「「「「ぽん」」」」






明日の早朝に撮る予定の企画に、道具の買い忘れがあったらしい。責任のなすりつけ合いになり、結局はじゃんけんになって俺が負けた。家の近くのドンキまで、歩いて結構かかる。クソ、ビール飲むんじゃなかった。






マフラーを巻き、ポケットに手を突っ込んで歩く。すると、すれ違ったカップルの会話がふと耳に入った。



「あの人やばくない？こんな寒いのに」

「酔いつぶれて歩道で寝るとか…しかも女だったし」









なんでかわからない。 なんでかわからないけれど、嫌な予感がした。

家でそらが延々と惚気ていたのを思い出す。



(…そういえばそらとあいつが行った焼肉ってここらへん、)









…いた。

鞄をぎゅっとかかえながらうつむく黒髪。歩道の脇で地べたに座って爆睡していた。
歩行者は怪訝そうな顔で彼女を避けて歩いている。しかしその中のいやらしい視線にも俺は気づいた。襲われたいの？こいつは。

とりあえずしゃがみこんで起こそうと試みる。酒くさ。やっぱ酒嫌いとか嘘だったか。





「おーい、おーい、起きろー」






肩を揺すっても全く起きる気配がない。


頭をぺちぺちと叩いても起きない。


………。








ばしん！！






「いった！！！」

「バカじゃんお前」








俺の顔を見てサッと青ざめた彼女の頭を、自分がしていたマフラーでぐるぐるにしてやった。あ、マフラー臭くないかな。ちょっと心配かもしれない。






「んむ、ちょっと、」

「おら帰るぞボケ」

「……立てない。フラフラする……」







ああ、本当に世話が焼けるな、こいつ。






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