38、小さなマリオネット ページ40
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意外にもあっさりと少女は停止釦を渡してくれた。抵抗されると思い身構えていたので敦君と顔を見合わせる
「これ全部貴方がやったの？」
ボロボロになった車内を見渡しながら聞く。車内に残る傷跡を見るに何か刃物で傷つけられたのだろうと思った。然しいくら刃物を振り回したとてここまで損壊するとは考えにくい。この子は異能力者なのか？
「夜叉がやった」
「夜叉？」
まるで他人事のように話す彼女に違和感を覚える
じっと遠くを見つめる少女の瞳は深い、深い深淵のようである。
「貴方───」
ビイイイィｯｯ
その時大きな音が流れ出した。爆弾からだ
「！何」
「て、停止釦を押したら急に！」
少女が一瞬目を見開くのが見えたが直ぐにまた表情を消してしまった。彼女も知らないようだった
『解除など不要。乗客を道連れにし、マフィアへの畏怖を俗衆に示せ』
少女の携帯から微かに声が聞こえた。敦君の持っているそれは爆弾の停止釦ではなかった。最初から停止させる気などなかったのだ
「爆弾を外すんだ！！」
もう遅いことは一目瞭然であった
「こんな…こんなのって！！」
敦君は必死だったが少女は既に諦めているようで、されるが儘だった。ここまで生死に頓着がないとは恐ろしい。少女が歴としたマフィアの人間であることが明白となった瞬間だった
私は動けなかった。少女が死を受け入れようとしていたから。無理に生かすのも酷だと思った。私は任務を果たせなかった者がその後どうなるか知っている
「間に合わない」
少女の細腕が敦の体を押した。幼い少女らしい細い腕だった。然しその腕は子供らしくない白さで。彼女の生活を物語るようであった
「…私は鏡花。35人殺した」
「───もうこれ以上一人だって殺したくない」
そして彼女は川に飛び込んだ
瞳の端から涙が溢れた様子を見て思わず息が止まる
「！」
走行する列車内で大きな爆発が起これば近くにいた私達だけでなく乗客全員を巻き込んで大量に死傷者が出ることは判りきっていた
私は酷く後悔した。
彼女は命の重さも殺すことへの罪悪感もまだ忘れていなかった。彼女は私達を殺さない為に飛び降りた
彼女は昔の自分と善く似ている。私なら彼女の痛みを判ってあげられたかもしれなかったのに
得体の知れない恐怖が躯を駆け抜けた
異能力で足を強化した敦が続けて川に飛び込んだ時も、Aの躯は動かなかった
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しじま(プロフ) - しじみさん» はわ…コメントありがとうございます…！！最初しじみ様のお名前拝見した時私の名前と似ていて一瞬困惑しました笑 面白いだなんて…お褒め頂き光栄です、めちゃ励みになります！更新お待たせしてしまう事もあるかと思いますが今後ともよろしくお願いします♡！ (2023年4月6日 12時) (
レス) id: 56a96b1c08 (このIDを非表示/違反報告)
しじみ - めっちゃ面白いです！！！ (2023年4月6日 11時) (レス) id: cb27ff8610 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しじま | 作成日時：2023年2月25日 12時
