246話*怪我* ページ8
越前--いや、皆の苦手な場所へと強めに打ち返した。
その球は空気を裂くように速く、地面がへこむように重い。
人間が危険を感じる場所。
みぞおちの上、首の下。
胸のど真ん中へとそれは速く突き刺さった。
その場所へラケットを持った手でガードする事はスピード的にかなり難しい。
越前「あぁッ……!!!」
冷静な判断をしたのか咄嗟の反射だったのか、球は見事に越前の右手に突き刺さった。
弱い胸元を守るために腕を犠牲にする。それは人間の本能なのだろう。
それでもかなり胸部にダメージのうけた越前は顔を歪ませた。
ゲーム終了のコールが越前の苦痛の顔に染み入る。
そしてその痛さだろうか、ゲームが終わった安心感からだろうか。
プライドの高い越前とは思えないほど無残に崩れ落ちる。
越前「……A、せ、んぱ……」
痛さからか歪んだ声で名前が呼ばれた。
本気ではないにしてもそれなりに強く打ったあの球で意識を飛ばさないのは流石越前という所か。
越前「次は、負けない……から……」
途切れ途切れのその声は負けたと言えどもその力強さを残したままで。
悔しそうな、それでもまだ勝つ気で居る越前には親近感がわく。
やがて越前は医務室へと運ばれていった。
他の皆より軽傷だとしても検査のため、病院に連れて行かれるのだろう。
最初は三校で始まった合宿も今は芥川、柳生、丸井、切原、菊丸の5人しか残っていない。
菊丸が越前を医務室に連れて行き、今は四人がコートの周りで佇んでる。
何を感じているのだろう。
「ほんとッ……最悪だぜ」
誰かの声が聞こえた。
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玲 - まるでその場に自分がいるかのようにのめり込むことができました!とてもいい作品をありがとうございます!長文失礼しました。 (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - もう…すごいとしかいえません。これほどの出来の長編を完結させるとは…!描写もすごくわかりやすいし、とてもよく考えて書かれたものなんだなってわかりました。読みながら主人公に共感したり、いろんなキャラに、いい奴だな、とか、かわいいなって思ったり… (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - 出雲流夏さん» コメント有難うございます。更新が遅くなり申し訳ございません。話の展開の予想外さ、文章や言葉はその時々の流れや雰囲気により使い分けを意識しているのでそう言って頂けてとても嬉しいです。またお時間のあるときにでも読んで頂ければ幸いです。 (2017年5月9日 23時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
出雲流夏(プロフ) - 更新されていて、すごく見れることが嬉しかったです。月夜見さんの文章や言葉はキレイだと思います。私のような素人でもスッキリと頭の中に入ってきて、話の展開がよめなくて、キャラそれぞれが際立っていて、凄いと見ていて思いました。更新楽しみにしてます。 (2017年5月8日 16時) (レス) id: 3483900707 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - るりなさん» 待っていて下さった事にまず嬉しくてニヤケが止まりません……!!これから更新はできるだけ週2、3ぐらいで続けたいと思います笑 ありがとうございます!ただいまです! (2016年12月6日 1時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜見 | 作成日時:2015年5月10日 15時