284話*精一杯の気持ち* ページ47
「いや、そりゃ少しは身体使えって言いましたけど……馬鹿ですか?!」
二日間、様々なところに行っていた僕が病院に戻って聞いたのはそんな言葉だった。
何しろ半年間床につきっぱなしで動いてもいない僕の体はその二日間でありえない程の痛みを訴えていた。
どうやら酷い筋肉痛らしい。
面白いほどに看護婦や医者に貶され、僕はそれなりに楽しい病院生活を送る事になった。
丸井「やっほー、A!メロン持ってきたぜぃ。」
皆と和解をした僕の元には毎日入れ代わり立ち代わりで色んな人が訪れる。
A「どうせ自分で食べるクセに……」
丸井「へっへー、俺が買ってきたモンだからな。……一口やろうか?」
A「いる。」
隔週ペースで来る丸井は毎回何かしら買ってくるものの「買ってくる」だけで「見舞い品を持ってくる」わけではない。
その思い切った性格の丸井と居るのは楽だし何より面白かった。
跡部「よぉ、どうだ俺様の病院は。」
A「お前のモンでもねぇだろ。……最高。」
跡部「はっ、当たり前じゃねぇか。」
週一で来てくれる跡部とは毎回そんな会話を交わす。
ティッシュが切れそうだとか、新しい歯ブラシが欲しいだとか、そんな事を言えばすぐに新しいものを届けてくれるし思いのほか僕に気を使ってくれている。
正直とても有難いし、時折持ってきてくれる氷帝テニス部の練習風景のビデオは見ていて飽きない。
越前「セーンパイ、お土産ファンタですけどいいっすよね。」
A「お前……そろそろ真面目に補習受けろって。」
越前はファンタを片手に時たま姿を現す。
公式試合やら合宿やらで抜けていた分の国語の補習から逃げまくってここにたどり着くようだ。
教師も意識不明の期間が長かったからか僕のお見舞いに来るという越前には強く言えないらしい。
とはいえ、話し相手になってくれるのはそう悪くはない。
里穂「やっほー!これ、持ってきたよ。」
A「あ、いつもサンキュ。」
里穂はいつも新しい下着やパジャマを持ってきてくれている。
少し饒舌になった僕と里穂はいつも以上に色々と話し合う事も出来て。
里穂「あ、そういえば聞いて!彼氏できた!」
A「おめでとう、興味ない。」
里穂「うん、そうだろうなって思った。」
そんな他愛のない会話も楽しくて。
いつしか里穂の事を躊躇いもなく「友達」と、そう紹介できるようになった。
そして僕の身体はいつしか、徐々に元へと戻っていった。
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玲 - まるでその場に自分がいるかのようにのめり込むことができました!とてもいい作品をありがとうございます!長文失礼しました。 (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - もう…すごいとしかいえません。これほどの出来の長編を完結させるとは…!描写もすごくわかりやすいし、とてもよく考えて書かれたものなんだなってわかりました。読みながら主人公に共感したり、いろんなキャラに、いい奴だな、とか、かわいいなって思ったり… (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - 出雲流夏さん» コメント有難うございます。更新が遅くなり申し訳ございません。話の展開の予想外さ、文章や言葉はその時々の流れや雰囲気により使い分けを意識しているのでそう言って頂けてとても嬉しいです。またお時間のあるときにでも読んで頂ければ幸いです。 (2017年5月9日 23時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
出雲流夏(プロフ) - 更新されていて、すごく見れることが嬉しかったです。月夜見さんの文章や言葉はキレイだと思います。私のような素人でもスッキリと頭の中に入ってきて、話の展開がよめなくて、キャラそれぞれが際立っていて、凄いと見ていて思いました。更新楽しみにしてます。 (2017年5月8日 16時) (レス) id: 3483900707 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - るりなさん» 待っていて下さった事にまず嬉しくてニヤケが止まりません……!!これから更新はできるだけ週2、3ぐらいで続けたいと思います笑 ありがとうございます!ただいまです! (2016年12月6日 1時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜見 | 作成日時:2015年5月10日 15時