279話*心から* ページ42
里穂「ばっかじゃないの!?」
里穂の声が静まり返ったテニスコートに響き渡る。
里穂「謝って、それで終わり!?テニス部をめちゃくちゃにしておいて、他校のテニス部にまで迷惑かけて!!」
手塚「里穂。」
ようやく口を開いた手塚が里穂の言葉を遮った。
手塚が威圧するかのように歩いて僕の前へと立ちはだかる
手塚「……お前が入院してた半年、何度も話し合った。……当然、里穂の嘘も全て話させた。」
その声はあまりにも緊張しているようで
妙に固く、それでいてどこか悲しそうでもあった。
手塚「嘘に気づけず……いや、嘘だとわかっていたとしても
俺達が手を出すというのはやり過ぎた。恥ずべき行動だったと思っている。」
手塚がラケットを置いてから深々と頭を下げた。
手塚「本当に、申し訳なかった。」
威厳に溢れた部長の小さくなった姿はそれだけで部員に対する牽制と謝罪の気持ちを表しているような気がした。
A「……手塚らが謝る必要はない。そのあとに、僕は酷い事をしたから。」
不二「それでもテニス部を暴力の泥沼化にしたのは最初に手を出した僕たちだからね。」
手塚に促されるように、言葉が投げかけられた。
それに栓を抜かれたかのように、僕に次々と部員たちの言葉が投げかけられる。
「お、俺らも……団体で女を暴力で押さえつけたのは後悔してる。……悪かった。」
「なんっつか、俺も詳しいこと分かんねぇまま合わせて傷つけて悪かったっす。」
「Aも……英二も、二人の事信じなくて本当にごめん。」
どちらが悪いとかそういう事ではなくただ自分のした事についての謝罪を並べられる。
そこには恐らく話し合いを重ねて
自分の悪かった所をきちんと明らかにしていたであろう言葉ばかりで。
越前「……なんっていうか、態々先輩の嫌がる事ばっかしてた事には謝るッス。」
A「ありがとう。」
クスッと小さく笑みが漏れた。
似合わないけれどきちんと考えてくれている言葉が嬉しくて。
半年離れていたからか少しだけ頑丈になったような気がする越前がキョトンとした瞳で僕を見た。
菊丸「ね、俺も俺も。」
A「菊丸は何も言う事ないだろ。」
菊丸「あるよ?」
菊丸はそんな言葉を口にした。
少しの間、すれ違いは少しあったものの終始僕の味方で居て今も車椅子を引いてくれている菊丸がなにを言わなければいけないというのだろうか。
菊丸「守れなくて、ごめんね。」
菊丸は眉を下げて、小さく呟いた。
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玲 - まるでその場に自分がいるかのようにのめり込むことができました!とてもいい作品をありがとうございます!長文失礼しました。 (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - もう…すごいとしかいえません。これほどの出来の長編を完結させるとは…!描写もすごくわかりやすいし、とてもよく考えて書かれたものなんだなってわかりました。読みながら主人公に共感したり、いろんなキャラに、いい奴だな、とか、かわいいなって思ったり… (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - 出雲流夏さん» コメント有難うございます。更新が遅くなり申し訳ございません。話の展開の予想外さ、文章や言葉はその時々の流れや雰囲気により使い分けを意識しているのでそう言って頂けてとても嬉しいです。またお時間のあるときにでも読んで頂ければ幸いです。 (2017年5月9日 23時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
出雲流夏(プロフ) - 更新されていて、すごく見れることが嬉しかったです。月夜見さんの文章や言葉はキレイだと思います。私のような素人でもスッキリと頭の中に入ってきて、話の展開がよめなくて、キャラそれぞれが際立っていて、凄いと見ていて思いました。更新楽しみにしてます。 (2017年5月8日 16時) (レス) id: 3483900707 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - るりなさん» 待っていて下さった事にまず嬉しくてニヤケが止まりません……!!これから更新はできるだけ週2、3ぐらいで続けたいと思います笑 ありがとうございます!ただいまです! (2016年12月6日 1時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜見 | 作成日時:2015年5月10日 15時