271話* かぞくのこと。３* ページ34
プロになってから無敗で勝ち上がっていく兄。
世界ランキングが上がっていき、どんどんと有名になっていく父。
そんな二人に褒められるには、
そんな二人より上に行くためには。
全国大会で相手に一ポイントも取らせずに僕が完全優勝する事。
それしか思いつけなかった。
今思えば二人はどんな試合でも褒めてくれたし僕と一緒に喜んでくれた。
それでも、どんどんと上にあがっていく二人を見ていると
不安で不安で仕方が無かった。
だからこそ一ポイントも取られない完全勝利を続けていると、
二人と対等になれた気もしたし何より「すごい」と褒めてくれた、喜んでくれた。
そして中学に入って最初の大会。
全国大会で今までと同じように順調に完全勝利のまま決勝へと登ってゆく。
忙しい兄と父もその時だけは中学に入って最初の決勝だからと応援に来てくれたから、
絶対に有無も言わさず優勝しようと思っていた。
なのに。
今回も最後まで、完全勝利のまま終わって、いつものように幸せな家に包まれようと思っていたのに。
兄「A、優勝おめでとう！」
母「Aが１ゲーム落とすなんて珍しいね。」
父「中学生の部で優勝なんだからいいだろ。」
全国大会が終わって車で戻る最中、そんな会話が車の中に響いた。
１ゲームも落とした、それだけ。優勝した。
なのに、会話全てが僕への慰めに聞こえた。
A「今度は、ちゃんと、優勝、するから。」
悔しくて、悲しくて。
兄「今回も優勝だよ。それにほら……久しぶりに一生懸命なAを見れて嬉しかったし。」
兄の暖かい手が僕の頭を優しく撫でる。
母「ほら、今日は早く帰って中学生初優勝のパーティしよう。」
母が助手席でトロフィを抱いて機嫌よく楽しそうに言葉を紡いだ。
父も車を運転しながら笑みが浮かんでいるのが見えた。
A「……ありがとう。」
柔らかい雰囲気に暖かい心。
これが私の家族だった。
そして家族を乗せて父が運転する車は高速に乗って帰り道を飛ばす。
父「ｧｯ……！」
父の小さな声が聞こえた。
瞬間。
《 キキｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｯｯｯｯｯ!!!!!!! 》
耳を劈くようなブレーキ音と
兄「A！」
兄の突発的な声が遠く聞こえて、
それと同時に重苦しい衝撃が身体を襲った。
・
272話* かぞくのこと。４*→←270話* かぞくのこと。２*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 303人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玲 - まるでその場に自分がいるかのようにのめり込むことができました！とてもいい作品をありがとうございます！長文失礼しました。 (2018年8月13日 19時) (
レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - もう…すごいとしかいえません。これほどの出来の長編を完結させるとは…！描写もすごくわかりやすいし、とてもよく考えて書かれたものなんだなってわかりました。読みながら主人公に共感したり、いろんなキャラに、いい奴だな、とか、かわいいなって思ったり… (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - 出雲流夏さん» コメント有難うございます。更新が遅くなり申し訳ございません。話の展開の予想外さ、文章や言葉はその時々の流れや雰囲気により使い分けを意識しているのでそう言って頂けてとても嬉しいです。またお時間のあるときにでも読んで頂ければ幸いです。 (2017年5月9日 23時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
出雲流夏(プロフ) - 更新されていて、すごく見れることが嬉しかったです。月夜見さんの文章や言葉はキレイだと思います。私のような素人でもスッキリと頭の中に入ってきて、話の展開がよめなくて、キャラそれぞれが際立っていて、凄いと見ていて思いました。更新楽しみにしてます。 (2017年5月8日 16時) (レス) id: 3483900707 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - るりなさん» 待っていて下さった事にまず嬉しくてニヤケが止まりません……!!これから更新はできるだけ週２、３ぐらいで続けたいと思います笑 ありがとうございます!ただいまです！ (2016年12月6日 1時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月夜見 | 作成日時：2015年5月10日 15時
