264話*するべき事* ページ27
丸井「……謝んじゃねぇよ。」
視線を絡ませたままのその言葉に丸井が顔を背けた。
拒絶するその言葉に僕も少しだけ瞼を伏せる。
A「……ごめん。」
拒絶と怒りと少しの驚きで満たされたその言葉が酷く虚しい。
そっと丸井の首から手を離した。
A「でも、そうなったのは僕が悪かったって思ってるから……。」
言い訳のようにそんな言葉を口にすると重々しい丸井の口が再び開かれた。
丸井「だから！……俺よりもお前の方が傷負ってるじゃんって話で……」
丸井が言いにくそうに口を窄めた。
予定外の言葉に思わず首をかしげる。
丸井「俺は打撲と出血は凄かったけど骨折もしてねぇ。……ってかお前が手加減してたんだろ。
それに比べてお前は……ほら、こんな事なっちまったし。」
あんな状態で手加減をしていたわけはない。
手加減ができる状態でもなかった。
それでもきっと恐らく無意識にコントロールは出来ていたのだろうか、骨折はしていないというその言葉に安堵が漏れた。
それに、と小さく丸井の口が動く。
丸井「試合中も入院中も、お前の方が苦しそうだった。」
それを気にしていたのだろうか、苦々しく丸井は呟いた。
A「……心配かけてごめんね。」
丸井「……おう。」
小さく丸井は頷いた。
A「だけどこれ、丸井の試合とは関係無いから。丸井が気にする必要はない。」
車椅子を一瞥して軽く肩を竦める。
確かに丸井がきっかけにはなったけれどもいつかこうなる予感はしていたしなによりもこうなった事を僕は悔やんではいない。
丸井は少しだけ安心したような表情を浮かべた。
A「だから僕は丸井にごめんと……あと見舞いの花、ありがとうって言いに。」
丸井「お、見舞いちゃんと届いてたんだ。」
菊丸「俺が渡さないとでも思ってたの！？」
今まで黙っていた菊丸も少しだけ会話に加わる。
丸井と菊丸がケラケラと笑うのを見ているとどこか羨ましく……感じてしまう。
丸井「お前が謝ると俺も謝らなくちゃいけなくなるから辞めろよ。……俺はまだお前を許してねぇし。」
丸井の言葉が不思議と僕の胸にすっと入ってくる。
不思議と胸は痛くならず、ただその言葉が当然のように僕の中に居座る。
丸井「俺が何でお前に喧嘩ふっかけたか覚えてる？」
A「幸村達を傷つけたからだろ。」
丸井「そ。じゃぁ俺が許せない理由も分かった？」
僕はコクンと小さく頷いた。
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玲 - まるでその場に自分がいるかのようにのめり込むことができました！とてもいい作品をありがとうございます！長文失礼しました。 (2018年8月13日 19時) (
レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - もう…すごいとしかいえません。これほどの出来の長編を完結させるとは…！描写もすごくわかりやすいし、とてもよく考えて書かれたものなんだなってわかりました。読みながら主人公に共感したり、いろんなキャラに、いい奴だな、とか、かわいいなって思ったり… (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - 出雲流夏さん» コメント有難うございます。更新が遅くなり申し訳ございません。話の展開の予想外さ、文章や言葉はその時々の流れや雰囲気により使い分けを意識しているのでそう言って頂けてとても嬉しいです。またお時間のあるときにでも読んで頂ければ幸いです。 (2017年5月9日 23時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
出雲流夏(プロフ) - 更新されていて、すごく見れることが嬉しかったです。月夜見さんの文章や言葉はキレイだと思います。私のような素人でもスッキリと頭の中に入ってきて、話の展開がよめなくて、キャラそれぞれが際立っていて、凄いと見ていて思いました。更新楽しみにしてます。 (2017年5月8日 16時) (レス) id: 3483900707 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - るりなさん» 待っていて下さった事にまず嬉しくてニヤケが止まりません……!!これから更新はできるだけ週２、３ぐらいで続けたいと思います笑 ありがとうございます!ただいまです！ (2016年12月6日 1時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月夜見 | 作成日時：2015年5月10日 15時
