261話*ずっと考えていた言葉* ページ24
跡部の優しさと怒りが垣間見える表情が少しだけ恐ろしい。
A「……別に。」
菊丸「Aっ!」
僕の逃げるような言葉に菊丸が歯止めをかける。
菊丸には話していた。
僕が言いたい事を、やりたい事を。
だからこそ、僕のためを思ってくれているのだろう。
部屋を見渡せば不安そうな芥川や気まずそうにそっぽを向く鳳が居る。
どの眼も純粋で透き通っていて。
あ、これ僕の負けだ
って
そう思った。
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/
A「……ごめん、なさい。」
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その声は小さく、怯えるように震えていて。
だけど静まり返ったその部室にはそれがよく響いた。
跡部「……ちげぇだろ。」
跡部は小さく呟いた。
A「は?」
鳳「跡部さんはAさんが倒れた原因が知りたいだけなんだと思います……。」
自信なさげな鳳の声に跡部は頷いた。
芥川が面白そうに笑っている事が少しだけ恥ずかしい。
A「原因なんて僕が一番知りたいよ。」
嘘をついた。
自嘲気に笑って、軽く肩をすくめて。
自然に嘘をついた。
跡部「そうか。」
だって当たり前だろ?
……自分の嫌いなところなんて、誰にも見せたくないんだよ。
A「とりあえず……僕は謝りに来ただけだから……もう、帰る。」
まだ力の入らない腕で車椅子の車輪を回す。
鳳「待って下さい!」
鳳の声が響いた。
忍足「……なんや俺らの言おうとしてた事先言われたみたいで気ぃ進まんわ……。」
忍足が苦笑を漏らしつつ皆を見渡した。
それぞれの面々が奇妙な面持ちをしている。
どうしてもなにか変な雰囲気が漂いがして車椅子を元の位置に戻す。
跡部「大体お前は何で謝ってんだよ。」
A「は?……別に、直接僕は被害を被ったわけではないのにお前らに被害を及ぼした。
それは絶対に許されない事だし。
なによりもお前らの大好きなテニスでそれをするっていうのは酷かった……悪かったって思ってるからだよ。」
少し言いづらくて、それと少し気まずくて、あまりみんなの顔を見る事はできない。
それでもなんとか想いを口にする。
ほう、と関心したような少し驚いたような声がどこからか聞こえた。
跡部「それは俺らも同じだって事だ。
お前と里穂の関係もよく知らねぇまま女の喧嘩に無駄に手を出した。
最初に吹っかけたのは俺らだろ。」
だから……
跡部「悪かった」
跡部の声が珍しく小さく聞こえた。
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玲 - まるでその場に自分がいるかのようにのめり込むことができました!とてもいい作品をありがとうございます!長文失礼しました。 (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - もう…すごいとしかいえません。これほどの出来の長編を完結させるとは…!描写もすごくわかりやすいし、とてもよく考えて書かれたものなんだなってわかりました。読みながら主人公に共感したり、いろんなキャラに、いい奴だな、とか、かわいいなって思ったり… (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - 出雲流夏さん» コメント有難うございます。更新が遅くなり申し訳ございません。話の展開の予想外さ、文章や言葉はその時々の流れや雰囲気により使い分けを意識しているのでそう言って頂けてとても嬉しいです。またお時間のあるときにでも読んで頂ければ幸いです。 (2017年5月9日 23時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
出雲流夏(プロフ) - 更新されていて、すごく見れることが嬉しかったです。月夜見さんの文章や言葉はキレイだと思います。私のような素人でもスッキリと頭の中に入ってきて、話の展開がよめなくて、キャラそれぞれが際立っていて、凄いと見ていて思いました。更新楽しみにしてます。 (2017年5月8日 16時) (レス) id: 3483900707 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - るりなさん» 待っていて下さった事にまず嬉しくてニヤケが止まりません……!!これから更新はできるだけ週2、3ぐらいで続けたいと思います笑 ありがとうございます!ただいまです! (2016年12月6日 1時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜見 | 作成日時:2015年5月10日 15時