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「事情ってもしかして…。」
「いえ、あの時のことではなくて…。」
テツが言わんとすることを遮って、百合は即座に否定した。
「じゃあどうして？」
超エリートの彼からしてみれば不可解なことに違いない。
「自立、しようと思って。」
「自立？」
百合の答えにジャスミンが問い返す。
「卒業したら、海外のサージェス財団の部署に派遣されるんです。」
「エリートコース…みたいな感じ？」
ウメコが訊いた。
「そんな高尚なものじゃないですよ。」
「新しい組織の実験台ってところかな？」
「まぁ、そんな感じです。」
そう推理するセンに百合はただ苦笑いするしかできない。
「日本を離れることを、まだみんなには言ってなくて。言ったら、きっと辛くなると思うし。だから学校に行っている時間以外はずっと工房…仕事場に引きこもっているんです。」
「そんなに顔を合わせたくないのか？」
怪訝な顔をしてホージーが問いかけた。
「わたしにとって、みんなは家族のようなものなので。しかも過保護な兄が二人もいるから…何も言わずに出て行くのがお互いに一番良いんじゃないかなって。」
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作者名：kanade | 作成日時：2021年5月9日 22時
