不登校の私は人気歌.い手として活躍しています！その9-2（通常ver）

＃374　気持ちを伝えられないんだ。 ページ46

Aside

その人を見てあの時の、弓乃の屋敷で会った光さんっていう人だって気づいた。
でも光さんは私のことに気づいていないみたいだったしいいやと思って話さなかった。

『ありがとうございました…。』

さっき家に入れてくれてなかったらということを考えると身震いした。本当に良かった…。
そう言うと光さんは

「ならその翔兄ちゃんっていう人の家まで送ってあげるから。何があったかは知らんけど…。」

そう言って私を翔兄ちゃんの家まで連れて行ってくださった。
夜遅いからって。

『私のこと……何も聞かないんですね。』

普通は、今まであってきた大人は私のことを知りたがった。こんな夜遅くまで何してるのって言われた。それで私のことを聞いてきた。
私はそんな人たちが嫌で嫌で優しくされてもひどい言葉で言い返して逃げた。

だから私は好かれなかったのかな。とか思ったり。

そんな私にも光さんは何も聞かずに翔兄ちゃんの家まで連れて言ってくれた。

「聞いてほしくなさそうやからきかんのんや。そんなんで聞いても本当のこと話すとは思わんしね。」

そう言って私に微笑みかけてくれた。
それが私には嬉しかった。だって聞かれても何を言っていいのか分からなくなるから…。だから本当のことが話せない。すべてを伝えきれないから。でも、誰かに私のことを知ってほしいと思う。

でも、私の言葉足らずで話が伝わりきらなくて結局何も言えない。分かってもらえない。それが悔しくて何度泣きたくなったか分からない。

私が黙っていたら

「俺にも聞いてほしくないこと沢山あるからわかるよ。」

光さんはそう言って黙った。

弓乃の屋敷にいる人は、弓乃の家にかかわった人は私の知る限りみんな不幸になるよ。
偽りの笑顔を張り付けて、堅苦しい決まり事(ルール)を守らないといけない。そんなのいくら金があっても、権力があっても、好きなようにできても、自由じゃない。幸せじゃない。

きっと光さんもそんなのに縛られている一人なんじゃないか…。そうしたらそれは私のせいだ…。

『ごめんなさい。』

ついこぼれた一言。光さんは驚いた顔でこちらを見た。でもすぐにニコッと笑って

「気にせんでええんよ。まあでも、嘘つくのはようないよ。隠しとってもすぐに分かるから。」

それだけ言って翔兄ちゃんの家まで送ってくださった。それから少し素直になってみようと頑張った。
光さんとはそのまま会うことはなかった。

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