＃376 何も知らなかった。 ページ2
Aside
『まず、luzさんとあの時別れてから私は翔兄ちゃんの家で暮らすことになりました。あれから中学生になるまで家に帰ったことはないです。中学生になって、翔兄ちゃんの家を出ました。』
そう。どうしても迷惑をかけたくなかったし、私のために翔兄ちゃんのご両親が大変な思いをする必要はない。こんな私を少しの間だけでも家に置いててくれただけでうれしかった。
それに私があの家にいずらかったから。
やっぱり親戚とはいえ、私は家族じゃないから。なるべく家事は手伝ったし、自分のことの前に私は翔兄ちゃんのご両親の手伝いを頑張った。
『翔兄ちゃんの家で暮らすようになって私はその家の近くにあった小学校に通うようになりました。私は学校というものが初めてでした。学校がどういうところかも、勉強とは一体何なのかも知りませんでした。』
私の話をluzさんは静かに聞いてくれていた。
上手に話せない気がしたけど、luzさんは最後まで聞いてくれる。そう直感的に思った。
『学校では友達っていえる人もできました。今では全然つながりはないですけどすごく優しくしてくれていい子でした。私は今まで勉強を一切してこなかったので小学一年生ができるような簡単な足し算、引き算とかも何も知らなくてすごく焦りました。』
そう。思ったより大変なんだ。
みんなができることは私はできないってすごく悔しいし、現実から目をそむけたくなる。だからこそ頑張ってみんなに追いつこうと独学で頑張った。小学5年生になるころにはちゃんとみんなと同じレベルにまで追いついた。
『そこから勉強も頑張って、みんなと同じレベルまで追いつきました。だんだん落ち着いた生活が過ぎていきました。ある日ふと思いました。「お母さんはなんで私を迎えに来てくれないんだろう」って。』
あの事を思い出すと今でも涙が出てくる。
必死に頑張っていて、現実を見落としていた。少し落ち着いてきて、余裕ができたときに思い出した。お母さんはどこなんだろうって。
『私は一回家を見てくることにしました。翔兄ちゃんにも、翔兄ちゃんのご両親にも黙って。一人で。』
そう。一人で行った。なるべく無心で話そうと思った。じゃないと辛くなるから。
『家の玄関の鍵は私は持っていました。だから、鍵を開けました。その家は昔は花がたくさん咲いていました。でも、手入れもされてなくて、枯れた花がたくさんありました。お母さんはいくら辛くても花の手入れだけはきちんとしていました。』
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