松川サン、俺コッチ。【松川一静】

ストーリー＊38 ページ40

▼松川Aside




「松川さん！」

「よかった！見つかって…！」

『湊さん…結木さん……』




教室に戻ると、真っ先に2人に抱きつかれた私。

そのあとから、クラスメートたちが集まりだす。




「悪いことしてごめんな…」

「私たち、なにも考えなかったばかりに…」




次々に謝られ、少し困惑したけど、

気持ちを落ち着かせて言った。




『わ、私こそごめんなさい…。

みんなに、迷惑かけてしまって……』




沈黙が流れる。

それを破ったのは、私の隣にいた彼だった。




「お互い様ってことだろ。

俺も、いきなりあんなこと言ってゴメンな。

許してくれ」

「おうっ。俺らも許してくれよ、2人とも」

「って言ってますが、どーします？松川サン」




どうって……そりゃあ。




『…許、す』

「だそうだ。よかったな。これで解決だ」




松川クンの一言で、クラスは明るくなった。

よかった、ありがとう、などの言葉が、

聞こえてくる。




「俺たち、小学生みたいだな」

『？』

「たった1つのことで、みんなで喜ぶって、

素直な小学生みたいだろ？」

『そう、ね……でも、それもいい気がするわ』




初めて思えた。このクラスが好きかもって。

ろくに会話ができなくても、

ちゃんと私を輪の中に入れてくれる人がいる。

私なんて眼中にないと思っていたのに、

ちゃんと私の存在を知っている人がいる。

それだけで、嬉しかった。


こんな私も、ガキなのかもしれない。




「ガキはガキなりにあるんだよな」

『ガキはガキなりにわかることだってあるわ』

「松川サン、前に自分は大人みたいなこと言ってなかった？」ｸｽｯ

『……撤回する。私も、まだまだガキよ』




大人なんて、まだ先の話。

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