松川サン、俺コッチ。【松川一静】

ストーリー＊32 ページ34

▼松川Aside




いつものように教室に入って、

席に着いて本を読む。

…はずだったのに。




「松川さん！昨日、松川くんといいことあったみたいだね！」

『え…』




結木さんが、唐突にそう言ってきた。

昨日、松川くん、そのワードは心当たり大ありで。

一気に、背中に冷や汗をかく。

まさか…見られてたの？




『ち、が…』

「え、なになに！松川さんって松川好きなのか⁉」

「ほんとに？ね、いいことあったってなにが？」

『ちょ……違う…』




だんだんと集まりだしたクラスメート。

口々に松川くんのことを聞かれる。


……嫌だ。嫌だ嫌だ…っ。


どうして、こんなに注目されなきゃいけないの。

どうして、みんな私に話しかけるの。

どうしてっ…。




ガタッ！




『…っ』

「あっ、松川さん⁉」




耐えられない、あの場所は…。

私は、教室を飛び出していた。


どこに行こうか。どこか、静かで誰もいない場所。


そこだけを探して、走った。




『……あ…』




見つけた。

辿り着いた場所は、空き教室。

誰か来た形跡がついていないから、

きっと立ち入られていないんだ。


ここなら…大丈夫。


私はそこへ入り、時が過ぎるのを待った。

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