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急に冷めた空気を纏ったNakamuのまっすぐな瞳に、現実を突き詰められた気がした。
そういえば此奴も昔、彼奴くらいの歳の女に惚れて、結局その女を電話越しに殺されたんだ。Aと似てよく笑う女だった。あの女の方が賢かったけど、そのせいで其奴は自分から死を選んだ。
Nakamuに「大好きだよ。」なんて呪いのような言葉を残して、敵組織のボスの居場所を俺達に託して死んでいった。
Nakamuはその時のことをまるでなかったことかのように振る舞うから、俺達の間でもNakamuの前でその話をしないことが暗黙の了解になっていた。
だから、Nakamuの言葉には俺はもちろん、此方を伺いながらも部屋を去ろうとしていた他の奴等も目を見開いた。
「分かってるでしょ、シャケも。このままじゃ、俺の二の舞になる。」
ぽかんと目を見開いた俺を、Nakamuは悲しげに見つめた。
至って真剣な視線が俺に決断を迫る。彼奴の未来のために手放すか、危険を承知で囲い続けるか。
普段の俺なら迷うことなく手放すことを決めただろう。
それでも、思ってしまった。
彼奴を離さずに手元に置き続けたい。彼奴の笑顔も何もかも、独占していたい。そばにいてほしい。
自分さえ気付かぬうちにいつの間にか肥大していた彼奴に向けての感情が怖くなって、視線を下に向けると、きりやんにそっと肩を叩かれた。
「Nakamu、そんくらいにしてやれ。お前が心配してるのも分かるけどさ、シャケも混乱してるんだよ。同じ境遇を経験したことのあるお前なら俺たちより分かるだろ？」
「でも、このままだったら絶対にシャケが後悔する！こっちの世界で生きてきた子なら兎も角、闇を知らずに生きてきた子に惚れるなんて危険すぎる！分かるから言えるんだよ！恋は最大の弱点で、情勢が不安定な今、シャケが自衛もできない子を囲うのはリスクが高すぎる！シャケも分かるだろ⁉︎」
俺の胸ぐらを掴んでそう訴えてくるNakamuに何を言えなくなって、開き掛けてた口を閉じる。危険を犯してでもあの子といたいと思うのは、きっとあんまりにも無責任だ。
リスクを負うのが俺だけならまだしも、此奴等まで巻き込むわけにはいかない。
「…分かってる。俺がどうするべきかも、全部。」
「シャケ…。」
「じゃあ早くした方がいい。敵は待ってくれないんだから。」
スマホの画面はこんなときにでも呑気なAからのメッセージを煌々と映し出していた。
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