・ ページ30
軽く自己紹介をすれば、彼は目を見開いた。
「What are the requirements？
(要件はなんや？)」
『I've come all the way here because I've heard groans.
(呻き声が聞こえてきたので、ここまで来ました。)
Are you hurt?
(あなたは怪我していますよね？)
Please give first aid.
(応急処置をさせてください。)』
「……Have it your way.
(……勝手にせえ。)
……I'll kill you the moment you make a suspicious move.
(……怪しい動きした瞬間殺すからな。)」
初対面でこんな距離の詰め方して引かれないかと思ったが、脅しはかけられたものの案外すんなり受けいれてくれて良かった。
女子力高めだと思ってほしい！
とかふざけた理由で医療セット持ち歩いててよかったー！と心底思った。
イケメンを治療したちょうど後、スマホで時間を見れば推しの生配信が始まる十数分前だった。
『あー！ごめんなさい！あ、治療は終わりました！少し急いでるので！帰ります！お大事に！』
日本語が通じないことをすっかり忘れてしまっていた。
口頭でとりあえず色々告げて、イケメンさんなんか見ずに、ダッシュで帰った。
……数年前のそんな出来事を今、思い出した。
「……ようやっと、思い出したか？」
恐怖で声が出ないため、コクコクと高速で首を縦に振る。
はぁ、と溜息をつきながら前髪をかきあげる、あの時のイケメン＿コネシマさん。
夜中にインターホンが鳴り、こんな時間に宅配便？それともご近所さん？どっちにしても不躾だなぁ、なんて思いながら出たら、高速で家の中に入られ、玄関の鍵を閉められ、私は玄関のドアに押し付けられる始末。
俺のこと覚えとらんの？
なんていうセリフで、走馬灯のように一気に過去の出来事が頭の中に戻ってきた。
「探したんやで。
名前も言わずにお前帰ってもうたし。
ほんま一目惚れやったわ。
イタリアで必死に日本語勉強して、わざわざこっちまで来て」
拳銃をカチャカチャと言わせながら、淡々と語るコネシマさん。
「……俺んとこ着いてくるよな？」
お願いだから、拳銃を当てながら言わないで。
……過去の自分はなぜ、慣れないことをしてしまったのだろう。
やっぱり、慣れないことはすべきじゃない。
あとがき＿白猫→←慣れないことはするべきじゃなかった【kn】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
