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「あたしな、とんちゃんと別れてからも⋯⋯とんちゃんが好きやなぁって思ってん」
「⋯⋯じゃあ、なんで俺のこと振ったん」
「⋯⋯わからん」
「あんなぁ、わからんちゃうやろ⋯! なあ、おれが、どんだけお前の事で苦しんだか分からんやろ⋯⋯? ホンマに、ホンマに好きやったんやで、おれ! どんだけ泣いたと思ってんねん! おれ、おれ⋯」

 思わず感情的にAを揺さぶってしまう。ただ揺られてごめん、ごめんなんて言うのを見て、更にむかむかとしたものが湧いてくる。謝んなよ。前みたいにへらへらしてろよ。俺のこと、こんなにしたくせに。
 釣られて俺もぼろぼろに泣いてしまう。鼻の奥が薬味を食った後みたいにツンとしてにじむ。いてぇな。そのまま俺と20センチは差があるちまこい身体をぎゅうぎゅうに抱きしめて二人でよくある青春ドラマみたいに泣きあった。あーいうドラマでは席のホームとかで制服を着た若い俳優たちが情感を唆るが、こんな築10年アパートの一室でB級映画垂れ流してるんじゃロマンスもクソもねーよな。

「⋯⋯すまん、当たって」
「ううん。あたしも、ごめんね。とんちゃん」
「⋯ホンマに、縁戻してくれるん?」
「うん、もっかい、付き合お?」

 あぁ、おれ、どんなになってもやっぱAの事好きやなぁ。それから久し振りに手を繋いで下らないバラエティを見た。あーでもないこーでもない。あの芸人はつまらんとか今のツッコミは上手かったとか。朝日が昇る二、三十分前までサブスクしてた配信アプリの中から適当に番組を選んで見ていた。こんな奇天烈な関係が好きだ。ぎゅう、と手を握ると握り返してくれて、薄暗い部屋にテレビの発光ダイオードがぼんやりしてる。そのまろやかな光を受けてはにかむA。

「⋯⋯ねる?」
「眠いんやったら寝てええで」
「とんちゃんが寝るんやったら寝る」
「何やそれ」
「⋯⋯お誘いなんやけどなぁ。あほ」

 肩に乗っかったいじらしい顔が俺の方を向く。その瞳が酔いと少しの寂寞に包まれて仄かな情念を孕む。言葉の端々から洩れる熱い吐息が微妙な距離感の間にマッシブに反響する。やらしいなぁと思うのと同じくらいに触れた手のひらが熱くて火傷してしまいそうだった。俺もAも酔っ払ってるんやし、仕方ないよな。目元を親指の腹で拭ってやると雛鳥みたく甘えてくるのがたまらなく可愛くってどうしようもなくなる。朝になりかけた空が綺麗で、憎たらしかった。

・→←いつか死んだら君の腕に沈めて/tn



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かな(プロフ) - みかん畑さん» ありがとうございます!皆様本当に素晴らしい作品をお作りになりますよね!私も実は楽しみにしてます (2022年7月14日 7時) (レス) id: 849b27ce88 (このIDを非表示/違反報告)
みかん畑 - コメント失礼します!作品が凄く好きで見るたびに私はニヤニヤしてます! (2022年7月13日 23時) (レス) @page10 id: b9db204dbc (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 宮 村 。さん» ありがとうございます!!後の参加者様はもっともっと素晴らしい作品をお書きになるので是非最後まで見てくださると嬉しいです! (2022年7月10日 10時) (レス) id: 849b27ce88 (このIDを非表示/違反報告)
宮 村 。(プロフ) - 初コメ失礼致します!! もう好きすぎてやばい作品です(( (2022年7月9日 23時) (レス) @page4 id: e0cd2bb1c0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かな x他4人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年7月9日 10時

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