1話 ページ1
「なぁ姉ちゃん」
「んー？」
「もう芸能界に戻らないの？」
いきなり言ってきたのは遊びに来ている我が弟。
姉の私から見ても超イケメンで、特撮で大ブレイク。
今は俳優の道を一歩ずつ進んでいた。
「戻んないよー。もう辞めちゃったし、もう20超えてるお姉さんが復帰すると思う？」
「でも勿体無いじゃん。あんなに歌もダンスもうまい上手かったのにさ」
「それは中学までの話！元々芸能界にいたのも人見知りを直すためにお母さんが入れた事だし、今は興味ないよ」
「でも、俺、姉ちゃんと一緒にテレビで共演してみたかったなぁ・・・」
「残念でした！おっと、じゃあ、私、バイトだから行ってくるね！鍵はいつもの所でよろしく！」
「はいはい」
今日はオフだった弟を残して、私はコンビニのバイトへ出かけた。
「芸能界、ねぇ・・・」
さっきはあんな事を言ったけど、ぶっちゃけ言うと戻りたいって気持ちはあったりする。
でも、もう20過ぎてるし、今さら事務所に入れて！なんて言えないしね。
「やっと見つけた！」
「ほぁ！！」
後ろからいきなり声をかけられて振り向くと、おじさんが息切れを起こしながら、立っていた。
「えっと・・・大丈夫ですか？」
「YOU、Aちゃんだよね！？」
「えっ！？えっとー・・・」
「僕だよ！僕！！」
「あ！あー！！ジャニーのおじさん！！って何でこんな所に？」
その人は芸能活動していた時に何度か会ってたジャニーズ事務所の社長・ジャニーさん。
会うたびに「ジャニーズ事務所においでよ！」「ジャニーズ事務所は女の子は入れないから無理！」っていつも定番の会話をしていたのが今となっては懐かしい思い出。
芸能界を引退してからは何度か家に電話がかかってきて、お母さんが断っていたのを聞いてたけど、実家を出てからは連絡先を教えてなかったから、おじさんとは連絡が途絶えていた。
「いやぁ〜、探したよ！一人暮らしを始めたって聞いたけど、君のお母さん、教えてくれないんだもん」
「教える理由が無いでしょ？で？何か用ですか？どうせ事務所に入らない？とか言うんだろうけど」
「さすがAちゃん！君をスカウトしに来たんだ！事務所に入らない？」
「お断りです」
「まぁまぁ、話だけでも！ね？」
「・・・話だけならいいですけど」
埒が明かないと思った私は、仕方なくおじさんの話を聞く事にした。
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作者名：ミュウ | 作成日時：2018年4月22日 12時
