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30.unexplained ページ32

車に乗って約25分。


『──ここで良いです。降ろしてください』


そう彼に伝えれば、彼は笑って「目的地まで送っていくのに」と云った。


『いえ。途中で和菓子屋に寄らなくてはなりませんから、ここで大丈夫です』

「そうかあ。ま、良いや。今日は楽しかったよ、ありがとう。……嗚呼、それと」


呼び止めるような声音で云われ、反射的に振り返る。


『はい』

「もし良ければ、その用事とやらが終わった後にどうかい? 私と心中でも」


女性を一瞬で虜にしてしまいそうな甘い笑みを浮かべて、彼はそう云った。


『……え?』


──心中?

その言葉の響きに、何とも云えぬ覚えの無い懐かしさが、頭を過ぎる。





“このキャラはね、かなりの自i殺マニアで、道行く人に綺麗な人がいたら片っ端から心中(・・)を申し込んでるの”


その言葉にふふっと笑いながら、記憶の中の私は云う。


“それもう唯の迷惑行為じゃない。異能力の名前は……、ふぅん、────なの? 私、────は読んだことあるよ”

“わたしも読んだよ! 現実の───って凄いんだね。薬i物だらけだし女性関係も乱れまくってるし。漫画(こっち)の方が真面に見えてきちゃった”

漫画(こっち)の方が真面に見えるって相当だよ”





『……』


あれは、何の記憶?

何故だろう? 靄がかかったように思い出せない。

一度思い出したことがある気がするのに、今の私にはそれすら分からない。




──あれ? そういえば私、なんで日本に来るのをあんなに拒んでいたんだっけ?




◇◆◇



「ありがとうございましたー」


お会計の店員さんに会釈をしながら、和菓子屋を出ていく。

結局、あの後は彼の組織の傘下にあるらしい和菓子屋の前で降ろして貰い、其の儘別れたのだった。


あの時に頭を過ぎった違和感は、未だ未解明の儘だけれど──まぁ、時間でも経てば直ぐに消えるだろう。

案ずることは無い。


携帯電話のマップを開き、母から教えて貰った会社名、“武装探偵社(・・・・・)”と入力し、検索にかける。


『意外と近い……』


歩いて200メートルの所にあるらしい。

これなら歩いてすぐ着くだろう。


和菓子の入った紙袋の持ち手部分をそっと握り締めながら、軽い足取りで歩みを進めた。

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珀惺(プロフ) - 水ガラスさん» ありがとうございます!!執事中の主人公は格好よく書きたかったので、そう言って頂けて嬉しいです……! (2022年9月23日 4時) (レス) id: f325ea4e61 (このIDを非表示/違反報告)
水ガラス - すごい……。面白いです!執事と聞いてどんな感じのだろうかと思っていたら、主人公のお仕事具合がかっこよくてびっくりしました。ぜひ主人公の幸せへの今世を応援したいです! (2022年9月23日 2時) (レス) id: 27a6582a0d (このIDを非表示/違反報告)
珀惺(プロフ) - クロノトさん» ありがとうございます……!これからもそう言って頂けるよう、頑張って投稿していきたいと思います! (2022年9月22日 6時) (レス) id: abe696b439 (このIDを非表示/違反報告)
クロノト(プロフ) - 神作品キタコレ!! (2022年9月21日 21時) (レス) id: 3be08e9739 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:珀惺 | 作成日時:2022年3月30日 22時

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