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21.her last wish ページ23

《ふふっ、冗談だよ。でも大丈夫、彼は少々口下手だが、正義感が強く優しい人物だ。決して物怖じする必要は無い》


『あ、そう……』


母さんがそこまで言うなら……、と、私は了承の返事をする。


『それで。その会社は、何と云う名の会社なの?』


会社名が分からないのなら訪れようが無い。
私は急かすように母さんに問う。


《嗚呼ごめん、教えていなかったね。その会社の名は──》


◇◆◇


母さんとの電話が終わり、私は先程聞いた会社名を脳内で反芻する。

一寸物騒な名前だな……なんて思ってしまったのは仕方が無いと思う。確かにこの名前なら、あの母さんが“少々特殊”と云うのも頷ける。


『只今戻りました』


旦那様はちらりと私の方を見てから、ほら見ろ、と窓から一機の飛行機を指で指した。


『あ……』


思わず、喉から声が漏れ出る。


「あれが、君の乗る飛行機じゃないか?」


滑走路上の白い機体に、搭乗券と同じマークが描かれている。

その大きさはヘリやジェットとは比べ物にならない。

これから私はこれに乗って日本へ行くんだ。


『……っ旦那様……!』


それで思い出した。

何か忘れている気がしていたのに、思い出せなかった、私の願い。


「何だ?」


今からでも間に合う。だから──


『お願いです、旦那様。絶対にこれだけは叶えて下さい。最初で最後の、私からのお願いです』


旦那様が片眉を上げる。


「……良いだろう、聞こう」


向こうで楽しそうにはしゃぐお嬢様の方に目を遣ってから、私は口を開いた。


『旦那様。これから私は此処(アメリカ)を発ち、日本へ行きます。もう、あなた方の側には居られません。出来るだけ帰って来ようとは思っておりますが、その時までに間に合うとも限りません』


その言葉に何を勘づいたのか、旦那様が私の目を見た。
そんな旦那様に、私は更に告げる。


『だから、お願いです。お嬢様のお命を、どうかお守り下さい』

「……!」


旦那様が息を呑む音が聞こえた。


『人は何時、どうなるか分からない。それが病気であれ、事故であれ、失ってからは遅いのです』


例えば、今回の事件のように。

私があの時気付いていなければ、お嬢様は今頃……。


考えるだけでも恐ろしい。



三社鼎立は彼女の死がトリガー。

それ故に、原作で一体どれだけの死者が出たのだろう。



それだけでも、私の行動次第で防げるのなら。



そう、思わずには居られなかった。

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珀惺(プロフ) - 水ガラスさん» ありがとうございます!!執事中の主人公は格好よく書きたかったので、そう言って頂けて嬉しいです……! (2022年9月23日 4時) (レス) id: f325ea4e61 (このIDを非表示/違反報告)
水ガラス - すごい……。面白いです!執事と聞いてどんな感じのだろうかと思っていたら、主人公のお仕事具合がかっこよくてびっくりしました。ぜひ主人公の幸せへの今世を応援したいです! (2022年9月23日 2時) (レス) id: 27a6582a0d (このIDを非表示/違反報告)
珀惺(プロフ) - クロノトさん» ありがとうございます……!これからもそう言って頂けるよう、頑張って投稿していきたいと思います! (2022年9月22日 6時) (レス) id: abe696b439 (このIDを非表示/違反報告)
クロノト(プロフ) - 神作品キタコレ!! (2022年9月21日 21時) (レス) id: 3be08e9739 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:珀惺 | 作成日時:2022年3月30日 22時

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