20.girlhood ページ22
──それから、旦那様のお説教を受け、あらゆる仕事を片付け、私自身の準備も終え、出発直前。
「……コハル?」
ぼーっと邸宅の正面に広がる薔薇の庭園を眺めていると、お嬢様が首を傾げて此方を見ていた。
『……いえ』
ふ、と静かに微笑んでお嬢様を見る。
『只、綺麗だなって』
すると、お嬢様もふふっと笑って頷いた。
「えぇ、確かに綺麗ね。……本当、
◇◆◇
空港に到着し、旦那様と奥様、お嬢様と共に展望デッキへ向かう。
「飛行機は初めてかな」
真上から声が降ってきたので、振り返ると、旦那様がいつもの笑顔で此方を見ていた。
『そうですね。ずっとアメリカにいましたから。国内の移動の際も、ヘリやジェットでしたし。飛行機に乗ったことだけはございません』
「そうか。或る意味初めての体験だな。……だがな、コハル。飛行機から見る光景は息を呑むぞ」
『い、息をですか?』
高所恐怖症とか、そう云う類のものだろうか……と考えていると、旦那様がにやりと笑った。
「嗚呼。君には是非自分の目で確かめて貰いたい」
特に着陸直前の景色をな、と旦那様が続ける。
『……?』
高所恐怖症を楽しめと言うのだろうか……?
否、私は別に高所恐怖症じゃないし……。
なんて思っているといきなり、手元の携帯電話の着信音が鳴り響いた。
画面を見ると、“母さん”と表示されている。
『すみません、母からです』
「嗚呼、気にせず出給え」
旦那様に一礼して後ろを向きながら電話に出る。
『もしもし、母さん? どうしたの?』
《ごめん、伝え忘れていた事があって。横浜に到着してから、君に一番最初に向かって欲しい場所があるんだ》
『私が?』
《そう。と或る民間の、少々特殊な会社でね。だが安心し給え、良い会社だよ。それで私、そこの社長さんと知り合いなんだけど、最近中々お話出来ていなくて。だからまぁ安否確認も含め、良ければ私の代わりに挨拶してくれないかな、って》
『え、それ私がやるの? 母さんなら未だしも、私が?』
《嗚呼大丈夫! 予め私から彼に連絡はしておくよ! なんなら今から!》
『え? 待って本当に一寸待って!』
慌てて母さんの奇行を止める。
……大丈夫か母さん。
徹夜明けでテンション可笑しくなったんじゃ……。
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珀惺(プロフ) - 水ガラスさん» ありがとうございます!!執事中の主人公は格好よく書きたかったので、そう言って頂けて嬉しいです……! (2022年9月23日 4時) (レス) id: f325ea4e61 (このIDを非表示/違反報告)
水ガラス - すごい……。面白いです!執事と聞いてどんな感じのだろうかと思っていたら、主人公のお仕事具合がかっこよくてびっくりしました。ぜひ主人公の幸せへの今世を応援したいです! (2022年9月23日 2時) (レス) id: 27a6582a0d (このIDを非表示/違反報告)
珀惺(プロフ) - クロノトさん» ありがとうございます……!これからもそう言って頂けるよう、頑張って投稿していきたいと思います! (2022年9月22日 6時) (レス) id: abe696b439 (このIDを非表示/違反報告)
クロノト(プロフ) - 神作品キタコレ!! (2022年9月21日 21時) (レス) id: 3be08e9739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:珀惺 | 作成日時:2022年3月30日 22時