18.得心 ページ20
『……酸素濃度が元に戻ったようです。これから私は地下室に突入しますが、皆さんはどうか此処でお待ちください。もし狙撃手が地下室にいたとして、彼に意識があった時、対抗出来るのは銃を持った私だけでしょうから』
そんな私の忠告に、彼らが揃って頷く。
「勿論です。コハルさんの足は引っ張りたくありませんから」
「信じていますから、無事に戻って来てくださいね!」
「何かあったら直ぐに呼んでください」
そんな彼らの返事に、私はありがとうございます、と返す。
そして、彼らの見守る中、私は静かに地下室へと降りて行った。
◇◆◇
片手に銃を持ちながら、地下室の照明を点ける。
すると、そこに広がっていたのは──。
『……本棚?』
四面の壁面にずらっと並べられ、私を囲む本達。
その光景を見て、嗚呼、そう云う事か……なんて一人納得してしまった。
この離れに無い部屋は一つ、
書斎である。
離れは、お嬢様が生まれてからずっと育てられてきた場所である。そのわりにはかなり違和感があった。
書斎が無く、お嬢様の部屋にあった本も、たった数冊のみだった。
あの本好きのお嬢様にしてはかなりおかしい。
そう考えてみれば、酸素濃度の調節出来るこの地下室は、本を保存するのに絶好の場所である。
本は紙で出来たものである故、かなり脆い。
日光に当てられれば色褪せを起こし、其の儘にしておいても酸化する。そうでなくても地上であれば虫食いに遭う可能性がある。
その全ての条件を達成し、本を読んだ当時の状態の儘で、永遠に保存出来る場所。
それが、酸素濃度を調節できる地下室だ。
お嬢様は聡い。その事を知っていたから、使用人に頼んで、地下室に本を保管するようにしていたのだろう。
成程な……なんて改めて自分の推理に納得していると、階段からかなり離れたところに、蹲っている黒い何かが見えた。
『……人だ』
その傍らには、壊れた機関銃が無造作に置かれている。
警戒しながら彼の手首に触れ、脈に問題が無い事を確認すると、私はほっと安心した。
──────────
かなり忙しく、もしかしたら今週はこれが最後の更新になるかもしれないです。
ですが可能な限り投稿します。
よろしくお願いします。
106人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
珀惺(プロフ) - 水ガラスさん» ありがとうございます!!執事中の主人公は格好よく書きたかったので、そう言って頂けて嬉しいです……! (2022年9月23日 4時) (レス) id: f325ea4e61 (このIDを非表示/違反報告)
水ガラス - すごい……。面白いです!執事と聞いてどんな感じのだろうかと思っていたら、主人公のお仕事具合がかっこよくてびっくりしました。ぜひ主人公の幸せへの今世を応援したいです! (2022年9月23日 2時) (レス) id: 27a6582a0d (このIDを非表示/違反報告)
珀惺(プロフ) - クロノトさん» ありがとうございます……!これからもそう言って頂けるよう、頑張って投稿していきたいと思います! (2022年9月22日 6時) (レス) id: abe696b439 (このIDを非表示/違反報告)
クロノト(プロフ) - 神作品キタコレ!! (2022年9月21日 21時) (レス) id: 3be08e9739 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:珀惺 | 作成日時:2022年3月30日 22時