キャンプの夜に ページ7
イレブンSide
その晩僕達はキャンプで野宿をした。Aが作ったシチューとドラキーの塩焼きを食べた。シチューは勿論ドラキーも美味しかった…ハマりそうな味だった。
カミュがくれた不思議な鍛冶セットで、僕は銅の大剣を、Aはカミュに聖なるナイフを作った。どちらもすごく出来がよくて、皆で喜んだ。
その日はレベル上げで疲れて皆すぐに寝てしまった。けれど、僕はどうしても眠りにつけなくて、近くの川の岸辺に腰掛けぼんやりと景色を眺めていた。
「…眠れないの?」
イレブン「…A…。うん、そうなんだ。今日色々とあったからね。僕がユグノア王子ってこと、未だに信じられないよ。」
A「そうだよね。私も、お父さんから聞いた時びっくりしたの。自分が拾い子で勇者だなんて、すぐには信じられなくて。」
Aは昼間の元気はどこへやら、ボソボソと話した。目は合わなかった。
イレブン「僕もお母さんから自分が勇者って聞いたとき、何で僕がって思ったんだ。勇者って絵本とかで、世界救うような人だからね。
エマやルキと何気ない日常を送ってきたのに、勇者だから旅に出なくちゃいけなくて。そしたら牢屋に入れられちゃうし、ほんとに何で僕なの?って思ってた。」
僕はそっと、Aの顔を覗き込んだ。Aは左目から涙雫を一筋流した。
A「私、お兄ちゃんに会えて、ほんとに、ほんとに安心してるの。1人で何匹もの魔物に立ち向かってくのは怖かった。傷は痛くて、薬草は傷に染みてもっと痛くて、MPすぐに尽きちゃうし、何度も帰ろうと思った。何で私勇者なのって。ずっと、そう考えて、魔物を倒してきた。
でも、きっとお兄ちゃんもそうなんだろうなって。何で自分なんだろうって思って、でも逃げ出せなくて。
…っ、お兄ちゃん、」
イレブン「…なあに、A」
A「これから、もっと辛いことたくさんあると思うの。…勇者だから。いや、勇者じゃなくても。勇者をやめたいって思う時がこれからたくさんあるはず。でも、せっかく勇者が二人いるんだもの。頼れるカミュさんもいる。
…よろしくね、お兄ちゃん」
そういって、苦しそうな顔つきをしていたAはにへ、と力なく笑ってみせた。
その時僕は思ったんだ。
イレブン『この子の前ではお兄ちゃんでいよう。勇者である前に、僕はこの子のお兄ちゃんだ。お母さんもお父さんもいない今、僕がこの子を守らなくちゃ』
そうして僕らは眠りについた。Aを抱いて、離すまいと思いながら。
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作者名:( ˙-˙ ) | 作成日時:2018年1月14日 22時