2-13 【……なんでだろう…なにが…】 ページ13
(琥珀side)
『…ふ、ぐぅ…ッ』
ボクは無我夢中であそこへ向かった。
素足で、雨のふる中庭を突っ切って行く。
ぺたぺたと足を踏み出す度に、足裏にひんやりとした泥の冷たさを感じた。
『う、うわぁあぁぁぁん…ッ』
どさ、とボクは__自室である離れに飛び込む。
わかっていた。わかっていたんだ。
ボクとみんなは、“違っていた”。
みんなは、ボクみたいに指が六本もない。
みんなは、ボクみたいに角がない。
みんなは、ボクみたいに術は使えない。
みんなは、ボクみたいに翼をもっていない。
『こんなのが、こんなのがあるから…ッ』
ボクは背にある翼をブチリと引っ張る。
烏みたいな羽が、数枚千切れてヒラリと落ちた。
痛い。
心が。身体が。
怖い。
周りと違うことが。日に日に増えて行く記憶が。
ある晩からだった。
悪い夢を見た。
みんなに似ているみんなと笑う夢。でも最後には、みんな嘘だったかのように消えちゃう夢。
毎日毎日、みんなに似ているみんなの記憶が増えて行く。
確定して死んでいるより、生きている希望があるのに居場所がわからない方が、ボクは恐ろしかった。
ねぇ。
ボクは、ボクは何を望んでいたの?
頭の中がこんがらがる。
…そうだ。
……そうなんだ。
ボクが一番望んだのは…
【『理解者だ…』】
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作者名:神鬼琥珀 | 作成日時:2017年1月2日 20時