【第六十二話】 ページ15
俺は窓の外を見つめていた。
もっと細かく言うのであれば、窓の外で自由に羽ばたく鳥を見つめていた。
今の俺は、鳥籠の小鳥そのものだ。何の抵抗も出来ず、外羽ばたく事を夢見るだけの意思の弱い小鳥。
この鳥籠から飛び出して、僕は何時か空となり、海となり、自然となりたい___。
と、その時。誰かがノックをする音が聞こえた。
まあ誰が入ってこようと構わないのだが。
「随分みすぼらしい姿ね、昔の笑顔の方がよっぽどマシよ」
「...!」
この声、この罵り具合、間違いない。
モンゴメリだ。でも何故?確かギルドから追放されたんじゃ...。
「...どうしたの、その格好」
「団長がね、メイドとしてここに残させてくれたのよ。まあ、アンタとの会話役にもちょうど良かったんでしょ」
そう言うと、モンゴメリは俺にカップを差し出した。
「.....ラベンダー茶」
「それ、よく作ってたでしょ。もしかしたら、アンタより美味しく出来上がってるかもね」
モンゴメリはあんな言い方をしているが、恐らく飲んでくれという合図だろう。
言われるがまま、ラベンダー茶を啜った。
「...美味しい」
「フッ...でしょ?」
「うん...俺の淹れたのより美味しいかも」
ほんのり優しさが伝わる温かい味、頭がふんわりとしてくるのが分かる。
「...ねえA」
「何...?」
「何で、此処に帰って来るのをそんなに嫌がるの?」
「...」
俺は、皆が嫌いになったから会いたくなかった訳じゃない。
皆に会わせる顔がなかったんだ。自分勝手にギルドを辞めて、例え皆の反感を買わずとも僕のプライドがそれを拒んだんだ。
だから会いたくなかった。
『嫌いになった』んじゃなくて『会わせる顔がなかった』んだ。
それに...
「もう、人のためにならない殺しはしたくない...」
たった一人の事情で一人の尊い命を奪うなんて、もうそんなことはしたくない。
僕は、乱歩さんみたいな...探偵社の皆みたいな、正義の味方に成りたかったんだ。
「...だから、帰って来たくなかったの?」
「うん...」
「そう.....でも、貴方が今居るのはギルドよ。
此処に居るまではギルドの人間に、人質になってもらうから」
「...うん、分かった」
俺はモンゴメリの言葉に、うんと頷くしかなかった。探偵社の仲間が来てくれる、その日まで。
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星月 菜兎(プロフ) - アメ子さん» お返事ありがとうございます!!楽しみにしています!!更新頑張ってください!! (2016年11月18日 23時) (レス) id: c1b876223e (このIDを非表示/違反報告)
アメ子(プロフ) - 星月 菜兎さん» 両方のエンドですね…(; ・`д・´)ゴクリ ではお話が終わり番外編が出来次第、片方のエンドを製作してみようと思います!リクエストありがとうございます!(≧∇≦) (2016年11月18日 7時) (レス) id: 664edc9cf7 (このIDを非表示/違反報告)
星月 菜兎(プロフ) - コメント失礼します!!ハッピーエンドも見てみたいですがバッドエンドも見てみたいです!!ぜひお時間ありましたらどちらも書いてください!!わがまますみません!! (2016年11月17日 1時) (レス) id: c1b876223e (このIDを非表示/違反報告)
アメ子(プロフ) - ゆずかさん» 3周もリピートされているとは…!大好きだと言ってもらえて嬉しいです、これからと頑張ります!!ヽ(。・ω・。)ノ (2016年11月15日 21時) (レス) id: 664edc9cf7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずか(プロフ) - 1ヶ月半ほど前から前作を読み始め、最近やっと追いつきました!これからどうなるんだろう、とワクワクしながら3周ほど読み直しています。何回読んでも飽きなくて面白くて大好きです! (2016年11月15日 20時) (レス) id: 6d28a617a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アメ子 | 作成日時:2016年9月16日 19時