二十七 ページ26
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「本当にありがとう、雄也」
「こ、宏太さんっ、ゃめてくださいそんなこと」
仕事に戻り、木々がすっかり葉を落とした庭を掃いていた。そんな俺の元にやって来た宏太さんが、深々と頭を下げてくるもんだから。
そりゃあ慌てるだろ。
「ご店主になるお人が、使用人に安易に頭下げちゃいけません」
「どうして？まず働いてくれる者に頭を下げられないなら、客商売なんかやめちまうよ？」
真顔で言われて言葉に詰まった。
何て人だろう、全く。
「慧の事情もさ…聞いても特別扱いしなかったのはお前が初めてだったよ」
「そんな…ただ俺は」
「いや。感謝しているんだ、本当に。身内の俺達では、どうしたって甘やかしてしまうから」
それは…光先生も仰っていたこと。
当事者である家族もまた傷付いているのだから、痛みが判る故厳しくしきれない。それは、躾を怠る甘やかしとは違うと、俺は思う。
「慧さんも、大切にされていることを判っておいでと思います」
今自分の傷を癒すのに精一杯でも、出来ることが増え視点が変われば、また違う見方が出来る。
「それに、一気に大人になってしまうかも知れませんし。今のうちお可愛らしい弟様を堪能なさればよろしいかと」
「…恐れ入る」
「は？」
「いや」
照れたように頭を掻いて、向き直られた。何か変なこと言ったかな。
「三者的な見方が出来るお前を尊敬する。ゃ、他人て事じゃなくさ」
「そんな…俺なんかに勿体ないことです」
「雄也、なんかって言うな」
それまでの空気を一変させられ、思わず凝視した。
「お前はもう、慧にも俺にも。薮屋に取っても必要な人間だ。卑下するような言い方はするな」
真顔で正面切って言われて、鼻の奥がツンとしてくる。
ぅわ…何だこれ。俺今、すげぇ嬉しいこと言われた？
今まで、蔑まれることが当たり前で、こんな風に言われたことなんてなかったのに。この人は最初から対等に接してくれて、大事な弟までを預けてくれる。
そして『俺』と言う人間を認めてくれる大事な言葉を今また、この人から貰ったのか。
「…ありがとう、ございます」
深々と礼を取る。
肩が震える。唇を噛み締め堪えた。何か言ったら泣いてしまいそうだ。
ぽん、と手がそこに乗って、離れてく気配。
足音がなくなるまで暫くそうしていた俺は、だから気付かなかった。
ここでは長い奉公人の作造さんと芳助さんが、物陰からずっと眺めていたことを。
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夏夢(プロフ) - mikaさん» mikaさまありがとうございます(*≧∀≦)読み返して頂いてるなんて嬉しすぎます！焦れったい展開で申し訳ないですが、もう少しお付き合いくださいませ♪ (2019年9月1日 20時) (
レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» ひかセンセーは周りのことなら敏いのですwそーよね、仕掛けるの見たかったっす！慧坊っちゃんも動くかなー？ﾋｬﾋｬﾋｬ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
mika(プロフ) - このお話が好きすぎて何度も読み返しています…！慧さんと雄也さんの関係もさらに動きそうな予感…！？続きを楽しみにしてます♪ (2019年9月1日 19時) (レス) id: 8f2d116da6 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - いやぁぁんん。光先生ッタラァー。察しが良すぎるー。そして、、なんですと？仕掛けたかったですと？？なぁんてこと！！見たかったぞwwwそして、かわいいヤキモチもいい！さすがコウタさんの選んだ人〜〜。さて？色々バレちゃったシー。味方が増えた！ (2019年8月28日 15時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 私もびっくりだよゆやさん(笑)一体誰に教わったんだー！そんなテクで落とした坊っちゃん大変にならないといーけど♪うひゃひゃ (2019年8月2日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏夢
| 作成日時：2016年10月17日 11時
