十四 ページ14
.
「
慧が十の時だったかな…。
奥様は冬になると、毎年南の方にある
…その時も慧と二人で先に発ったんだけれど、店が立て込んでしまって、宏太と旦那様は予定より出立が遅れた…。
二人が無事に着いたことを聞いたと思った矢先、寮が土砂崩れに巻き込まれたと報せがあってね…
」
「土砂崩れ…」
現実味がなく、ぼんやりと呟いた俺に、光さんは重々しく頷いた。
寮のすぐ裏は山で、その時は季節外れの雨が続いていた。それだけで容易に想像できる。
「奥様は慧を庇い、あの子は奥様の身体が盾になって助かったのだと聞いてる」
多くを話さない光さんに、頷いて見せた。
彼にとってもまた、進んで口にしたいことではないだろうと思ったから。
そうか…では…口が不自由だというのは…。
「その事故のせいだよ」
遠慮がちにした問い掛けに、光さんが言い切る。
それだけじゃなく、他にも諸々の後遺症が今も慧さんを苛んでいるのだと。
「だって、十かそこいらの子供が経験するには、衝撃的すぎるだろう?」
何も言えず見つめる俺を受け止め、光さんはそっと目線を落とした。
「夜も一人じゃ眠れないから、宏太が付ききりで…でも、そうも言ってられなくなって」
言葉を切った光さんの、白い頬が仄かに染まる。
「お前さんが来る少し前から、宏太が段々慣らしていってる所なんだよ」
ああ、そうか。
祝言を控えてるお二人だ、そういうことだよな。
「差し出がましいようですが…一つのきっかけなのでは」
そう言うと、光さんは少し笑ってくれた。
「察してくれて助かるよ。私はどうも口下手でね」
宏太さんがこの場にいたら、俺に構わず抱き締めて接吻くらいかましてるかも。
そのくらい、今の光さんは可愛らしい。
「誤解しないでおくれね。あの子が疎ましいとかでは決してないから」
「勿論です」
即答すれば、光さんは意外そうな顔をなさったけれど。
お二人が慧さんを大切に大切にしているのは、俺なんかでも充分判ることだ。
「流石は宏太だ…」
ふっと気を抜いた光さんが、ぽつりと溢した一言の甘いこと。
…惚気になりそうだから、聞こえない振りをしとこう。
.
528人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏夢(プロフ) - mikaさん» mikaさまありがとうございます(*≧∀≦)読み返して頂いてるなんて嬉しすぎます!焦れったい展開で申し訳ないですが、もう少しお付き合いくださいませ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» ひかセンセーは周りのことなら敏いのですwそーよね、仕掛けるの見たかったっす!慧坊っちゃんも動くかなー?ヒャヒャヒャ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
mika(プロフ) - このお話が好きすぎて何度も読み返しています…!慧さんと雄也さんの関係もさらに動きそうな予感…!?続きを楽しみにしてます♪ (2019年9月1日 19時) (レス) id: 8f2d116da6 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - いやぁぁんん。光先生ッタラァー。察しが良すぎるー。そして、、なんですと?仕掛けたかったですと??なぁんてこと!!見たかったぞwwwそして、かわいいヤキモチもいい!さすがコウタさんの選んだ人〜〜。さて?色々バレちゃったシー。味方が増えた! (2019年8月28日 15時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 私もびっくりだよゆやさん(笑)一体誰に教わったんだー!そんなテクで落とした坊っちゃん大変にならないといーけど♪うひゃひゃ (2019年8月2日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夏夢 | 作成日時:2016年10月17日 11時