十 ページ10
光.
泣けたことで宏太は少しずつ前を向いてった。その日を境に、俺に甘えるようになって、俺も少しでも力になりたくて勉強に熱が入った。
でも慧はそうじゃない。
成長していき、『話す』ことも出来るようになっていったけれど。
あの子の『声』は出ないままだ。
でも…悪戯に急かすのも良くないので匙加減は難しい。
「後はただ、見守っていこう…と」
宏太と俺は、何があっても味方だ。
あの子が無条件で甘えられる場所でいようと、心に決めた。
『よろしく頼むよ。宏太も君がいないとまるで腑抜けだからねぇ…おや、顔が赤いよ?』
「ぃえ、何でもありません」
ぬかった…その時初めて接吻されたことまで思い出してしまった。
あー恥ずかしいったら。
『そろそろ『お父さん』と呼んでくれてもいいんじゃないかい?そうそう、惚れさせておきなさいよ?そうすれば安泰だから』
ぅわ。
前半は兎も角、何か深いことを聞いた気がする。
『…宏太にねぇ、祝言を挙げてもこのままの生活をしていきたいと言われたよ』
「…はい」
ああ、本題はこっちか。
本来なら、宏太の…その、なんだ、伴侶!そう、伴侶になるのだから、この家に入るのが当然なのだけれど。
俺には医師になる為の勉強もある。
便宜上この家の人達からも『先生』と呼ばれているが、実際はまだまだ見習い生なのだ。
…俺の我が儘を、宏太は許してくれたけど。
『自分達に最善な方法なら、構わんよ』
「へ…」
つい間抜けな声が出た。
いやだって。
流石にこんなあっさり許可が出ると、疑ってかかりたくもなる。
『ご隠居が面白がってねぇ、構わないから好きにさせろと言ったからね』
「はぁ…」
俺が言うのもなんだけどそんな大雑把でいいの?
義父の苦笑に引き攣り、つい愛想笑う。
義祖父に当たる人の数多の『伝説』は、俺も宏太から聞いていた。
最も新しいのは、雄也を連れてきたことだけど。
(団子屋で引っ掛けたってな…)
気に入ったからって、普通いきなり連れてくるか?
(そういや慧は初対面こそ怖がってたけど、驚くほど早く懐いたって宏太が言ってたっけ…)
『光くん』
「は、はいっ」
『これからこの国を担うのは君達若い者だ。それまでの常識に囚われず、我が道を行きなさい』
「…はいっ」
慈愛に満ちた笑みを称える義父に、背筋が伸びる。
そうだな。己がぶれなければいい。
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夏夢(プロフ) - mikaさん» mikaさまありがとうございます(*≧∀≦)読み返して頂いてるなんて嬉しすぎます!焦れったい展開で申し訳ないですが、もう少しお付き合いくださいませ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» ひかセンセーは周りのことなら敏いのですwそーよね、仕掛けるの見たかったっす!慧坊っちゃんも動くかなー?ヒャヒャヒャ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
mika(プロフ) - このお話が好きすぎて何度も読み返しています…!慧さんと雄也さんの関係もさらに動きそうな予感…!?続きを楽しみにしてます♪ (2019年9月1日 19時) (レス) id: 8f2d116da6 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - いやぁぁんん。光先生ッタラァー。察しが良すぎるー。そして、、なんですと?仕掛けたかったですと??なぁんてこと!!見たかったぞwwwそして、かわいいヤキモチもいい!さすがコウタさんの選んだ人〜〜。さて?色々バレちゃったシー。味方が増えた! (2019年8月28日 15時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 私もびっくりだよゆやさん(笑)一体誰に教わったんだー!そんなテクで落とした坊っちゃん大変にならないといーけど♪うひゃひゃ (2019年8月2日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2016年10月17日 11時