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三十三 ページ32

雄也.


祝いの席も夜が更けるにつれ、人が引いてきた。


『ゆうやぁ…』
「はい、そろそろ寝る支度をしましょうね」

ぽふ、と甘えてくる慧さんは今にも寝そうだ。
何時もより遅くまで起きているから、もう限界だろ。

大さんに風呂での世話をお願いし、部屋を整えたり帰る客を見送ったり。
そうこうするうち、慧さんが部屋に戻ったとお清さんが知らせてくれて。


湯冷めしないよう夜着に半纏を羽織った彼の足を丁寧に揉みほぐす。
こうしないと血の巡りが悪くなるのだと、光先生が仰ってたから。

『気持ちいい。ねぇ、宏太の部屋に行ってもいい?』
「まだお戻りではないですよ?」

戻り際覗いた広間で、お二人がまだ挨拶をしていた事を告げる。あーあ、そんな拗ねないで。

「今夜は遅くなりそうですし、お二人もお疲れでしょうから。ね?」

下衆な事を思うけど、初夜だもんなぁ…。


『どうしたの?顔あかい』
「何でもありません。さ、横になりましょう」

慧さんも疲れてるだろうし、ぐっすり眠ってくれたらいいんだけど…。万が一の乱入だけは阻止しないと。

『うん。ねぇ、一緒?』
「…まだ仕事があるので、先に寝ててくださいね」
『うんっ』

一緒の部屋で寝ることを理解した慧さんは、一旦離れても不安がることはなくなった。
俺としては助かるし有り難い。



「おお雄也ご苦労さーん」
「ご隠居様。この度はおめでとうございます」

廊下で出会したご隠居に深々と頭を下げる。そういや今日初めて顔を見るな。広間にいたっけ?

「うんうん、宏太も漸く一人前だねぇ。やっと光を独り占め出来てさぞや安堵してるだろうよ」
「ご隠居様も一安心ですか」
「そりゃあもう。ここから先は、宏太に甲斐性があるかを見極めないとねっ」
「はぁ」
「ついては雄也」
「はい」

それまで浮かれた風情だったご隠居様が、すっと笑いを納める。

「慧のこと、頼んだよ」
「は…」
「あの子があんなに心を許してるの、兄の宏太以外初めてだからさぁ」

そんなことはないと思うけど…。大さんにだって女中達にだって、可愛がられてるし懐いてる。

「ふふん、そのうち判るよ。あ、僕はね、何時でも賛成だから」

賛成?

「さーてっ、窮屈な着物脱いでお風呂しようかなっ」

何が賛成か聞く前に、不思議な足取りで行ってしまう。
あれ…よくやってるよな。小さく飛ぶって言うか。
つくづく謎が深まるお方だ…。



.

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夏夢(プロフ) - mikaさん» mikaさまありがとうございます(*≧∀≦)読み返して頂いてるなんて嬉しすぎます!焦れったい展開で申し訳ないですが、もう少しお付き合いくださいませ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» ひかセンセーは周りのことなら敏いのですwそーよね、仕掛けるの見たかったっす!慧坊っちゃんも動くかなー?ヒャヒャヒャ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
mika(プロフ) - このお話が好きすぎて何度も読み返しています…!慧さんと雄也さんの関係もさらに動きそうな予感…!?続きを楽しみにしてます♪ (2019年9月1日 19時) (レス) id: 8f2d116da6 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - いやぁぁんん。光先生ッタラァー。察しが良すぎるー。そして、、なんですと?仕掛けたかったですと??なぁんてこと!!見たかったぞwwwそして、かわいいヤキモチもいい!さすがコウタさんの選んだ人〜〜。さて?色々バレちゃったシー。味方が増えた! (2019年8月28日 15時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 私もびっくりだよゆやさん(笑)一体誰に教わったんだー!そんなテクで落とした坊っちゃん大変にならないといーけど♪うひゃひゃ (2019年8月2日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏夢 | 作成日時:2016年10月17日 11時

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